BBB MAGAZINE

  • 藤原かんいち電動バイク世界一周 夢大陸オーストラリア編

    2008.11.24 / Vol.22

    「砂の怪物ブルダストにハマル」

CREDIT

    • ライター
    • 執筆

    藤原かんいち

    • 撮影

    藤原かんいち

    • バイク

    モトラ

VOL.22 「砂の怪物ブルダストにハマル」[夢大陸オーストラリア - 番外編 -]

次の町ボウリアで連泊。この頃どうもエンジンの力が抜ける気がする、不調のモトラを整備することにする。

パースの車検場
フル装備状態のモトラ。予備ガソリン25リットルの他、スペアパーツも積んでいる。

工具を広げると、キャブレターの分解掃除、エアフィルターとガソリンフィルターの掃除。さらにチェーンの弛みを調節、スパークプラグの交換にバッテリー液の補充など、僕のできる範囲の整備を行った。
その結果、不調の原因がプラグの汚れであることが判明。ガソリンの質が粗悪なのか、電極部が真っ黒に煤けていた。新品に交換すると、これがまるで新車のように調子が良くなった。ズーッと気になっていた不安が一気に吹っ飛び、スッキリサッパリ。
「この調子なら北極まで行けるぞ~っ!」と蘇ったモトラに跨り雄叫びを上げた。 ボウリアから進路を北から西にチェンジ、ドノヒューハイウェイに突入する。このルートは地図上では点線の〈4WD ONLY〉と記されたダートロード。かなりの悪路が予想されるので、ボウリアの町を早めに抜け出す。
ボウリアから150kmほど走っただろうか、いきなり道の砂が深くなった。深さ3~40cmはありそうな、砂の吹き溜まりに突っ込んでしまった。一気にモトラのパワーが吸い込まれてゆく。慌ててギアをローへ落とし、両足をバタバタと動かす。アクセルと開けると空回りする後輪が砂を巻き上げ、モクモクと砂埃が舞った。
ブルダストと呼ばれる、まるで石灰のように粒子の細かい砂なので一度舞い上がると霧のように漂い続け、なかなか落ちてこない。砂が鼻や口に入ってくるので、たまらずバイクを置き、砂埃の外へ飛び出した。

「ゴホッ、ゴホッ...」

砂が喉に入り激しくむせ返る。全くなんて砂だ。
タイミングを見計らい、息を止めて砂埃に突入、アクセルを開けながらバイクを押して脱出する。とにかくメインの轍は砂が深いので、メインを避けるように何本か伸びているエスケープする轍を進んで行く。だがこちらも所々砂が深いので、さらにエスケープルートをエスケープする轍を探した。だが、あまり離れるとメインルートの位置が分からなくなるので、つかず離れず適当な距離を取りながら慎重に進んで行く。
一度スタックすると目の前が真っ白になるくらい膨大な量の砂が舞い上がり、しばらく呼吸することができなった。
砂のない地面の固そうな轍を選びながら前進するが、それでも時々深砂にハンドルを取られ、何度も転びそうになる。深さ30cmはありそうな轍の底を慎重に走る。前方では砂埃がまるで湯気のようにユラユラと漂い、僕が来るのを不気味に待ている。
悪夢のようなブルダストがどれくらい続いただろう、徐々に砂の量が減り、「ウエルカムノーザンテリトリー」と書かれた州境にたどり着いたときは死ぬほど嬉しかった。砂はほとんど姿を消し、太陽が西の地平線をオレンジ色に染めていた。
「やったーっ、ついにドノヒューハイウェイを走破したぞ!」
州境にテントを設営すると、倒れるように転がり込み、泥のように眠った。さすが、4WD ONLYと指定されているだけのことはある、とんでもない道だった。

1700km続いたダート

パースの車検場
ノーザンテリトリーとの州境線。砂漠を越えこの標識が見えたときはホッとした。

「ガーッ、ガーッ」うるさいカラスの声で目を覚ます。一晩寝ると昨日の疲れは随分取れていた。焚き火でお湯を沸かし、大好きなミロを飲むと生気が一気に蘇えった。さあ、今日も走るぞ。
ノーザンテリトリー州に入った途端に整備された道になった。州が違うだけでこうも差があるものだろうか。道幅も広いし、路面も固い。限りなく舗装路に近いダートなので、これなら2日でアリススプリングスにたどり着けそうだ。
ボウラを出てから始めてのロードハウスに着くと、真っ先にコーラを買い、立て続けに3本胃袋へ流し込んだ。あまりの暑さとのど渇きで、胃袋に届く前に蒸発しているような感じがする。
ハーツレンジを過ぎると、1700km続いたダートが終わりようやく舗装路に変わった。スチュアートハイウェイに出ると、アリススプリングスはもう目と鼻の先だ。
9月27日。アリススプリングスに無事到着。

以前に宿泊したキャンプ場へ行ってビックリ、2ヶ月前にブルームの近くで会った高田くんが偶然テントを張っていたのだ。バイクのオイルポンプが壊れてしまい、部品が届くのをここで1ヶ月近くも待っているという。バイクトラブルはこれで2度目。
「オーストラリアの中古車はダメですね、修理代の方が高くついちゃいますよ...アハハハハ...」
と苦笑いをしながら明るく頭をかいた。
夜は高田くんと一緒に焼き肉パーティー。久しぶりの日本語、長距離ダートロードを走り抜けた満足感、おいしい食事、アリスの生活は何もかもが充実していた。しばらく文明的な生活をエンジョイする。
オイル交換をしていたところドレンボルトの締まりが甘いことに気が付いた。強く絞めすぎて溝を舐めてしまったのだろう。間にワッシャーを入れるといくらか締まりが良くなったので、応急処置としておく。そのうちどこかで修理しよう。

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