BBB MAGAZINE

  • 藤原かんいち電動バイク世界一周 夢大陸オーストラリア編

    2008.11.24 / Vol.41

    「一難去ってまた一難」

CREDIT

    • ライター
    • 執筆

    藤原かんいち

    • 撮影

    藤原かんいち

    • バイク

    モトラ

VOL.41 「一難去ってまた一難」[夢大陸オーストラリア - 番外編 -]

「こ、こ、これが道かぁ~!?」
思わず叫び声を上げた。
川が終わったと思ったら今度は壁のような道が目の前に現れたのだ。まったくオーストラリアってところは...。それにしても車でこの道が走れるのか首を傾げたくなる。スキー場の上級者コース並の急勾配のうえに、石がゴロゴロ転がるデコボコダートだぞ。

スプロケット
スプロケットもここまで使われれば本望か!?

呼吸を整え。サブミッションをLowレンジ、メインギアをローに落とす。これで登れなかったらもう、あの川に逆戻りだ。
「それだけはゴメンだぜっ!」
両タイヤ両足の4本を使いながら、ゆっくりと亀のように登って行く。恐ろしくて後ろを振りかえれない。
どうにか登り切ると、なんと道の先が見えない。まさかこの先が崖になっているんじゃ...とビビリながら進む。今度はハンドルを一瞬でも間違えたら真っ逆さまに転がり落ちて、間違いなく大けがをしそうな急坂が現れた。メチャクチャ怖いが、ここを降りる以外にここから抜け出す方法はないのだ。
一瞬たりとも気の抜けない状況が続く。上りよりも怖い。ギアは相変わらずスーパーロー、もちろん両足も地面に着きっぱなし。歩くような速度でゆっくりと下って行く。
息の詰まりそうな山を3、4つ越えただろうか、ようやくまともな道が現れた。あの狂った道は終わったのか? 半信半疑のまま進むが、5分、10分走っても変わらない。よかった。ついに最後の難関を越えたらしい。

2週間振りにケアンズに帰ってきた

ガソリンスタンドの公告看板
これでも一応ガソリンスタンドの公告看板なのだ

日没と同時にキャンプ場に到着。暗闇でテントを広げていると、シドニーから来たマークという青年が懐中電灯を貸してくれた。
テントを張り終えるとマークと焚き火を囲んだ。日本にとても興味があるらしく、来年行く予定だというので、来たら僕のところに連絡をくれるよう、住所を渡す。これまで何十人のオージーと住所交換をしているが、日本を旅行しようという人はほとんどいなかった。もしマークが来たらどこへ連れて行こう、やっぱりお寺や神社がいいのかな、回転寿司もいいかも。これで楽しみがひとつ増えた。
2週間振りにケアンズに帰ってきた。町並み、道路、海岸、何もかもが抱きしめたいくらい懐かしい。そして僕の心の中はケープヨーク行きを達成したという充実感に満ち溢れていた。
ケアンズでは久しぶりにうまいメシを食い、さらに携帯していたスペアパーツでチェーン&スプロケット交換した。スプロケットはノコギリの歯状態、チェーンも走行中に外れるほど限界まで伸びきっていた。ゴールのシドニーまで約3000km、リフレッシュしたので、これで最後まで行けるだろう。
ケアンズを出る日は2ヶ月ぶりの雨となった。
ケアンズからシドニーまでの東海岸はこれまで走ってきた無人の砂漠とは違って、国道に沿って大小の町がいくつも点在するオーストラリアでも特に人口の多いエリア。ナショナルルート1(国道一号線)は50~100kmも走れば大きな町が現れ、おいしい物を食べたいと思えば、いつでも簡単に手に入れることができる。風景も山あり、川あり、海あり、自然が豊かで飽きることがなかった。
だが反対に緊張感がなく、物足りなさを感じるのも確かだった。同じオーストラリアなのにまるで違う世界を走っている気分。

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