BBB MAGAZINE

  • 藤原かんいち電動バイク世界一周

    2007.11.03 / Vol.31

    電動バイク世界一周の旅『 待望のカッパドキア観光 』

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VOL.31 『 待望のカッパドキア観光 』[アジア大陸編]

藤原かんいちの冒険ツーリング

長かった旅の中断、そして再スタート

世界地図

昨年10月。ギリシャからトルコに入り、イスタンブールに着いた時。遠い日本のヤマハから"パッソル"のバッテリーがリコールになったという知らせが届いた。電話やメールでやり取りがあった後、結局旅を一時的に中断することになった。アジア横断の旅が始まってまだ1ヶ月、これからアジア本番というタイミングだっただけに、「せっかくここまできたのに~!」とふたりは歯軋りをした。しかし決まった以上仕方がない。対策バッテリーが完成するまで人間と一緒にバイクも日本へ戻ることにした。

日本に戻ると、これは少し休憩しなさいと神様がくれた時間だと気持ちが切り替わり、予定外の日本滞在を積極的に楽しんだ。ところが当初3ヶ月後には再スタートできる予定だったのが延長となり、結局、対策バッテリーが完成し受け取ったのは今年の6月下旬。中断してから約9ヵ月も日々が過ぎていた。
この間、日本にはおいしい物がたくさんあるので、ふたりとも食べ過ぎてすっかり太ってしまった。なまった体に鞭を打ち、早速再スタートの準備を始める。国際運転免許、カルネ(バイク通関の書類)、各国のビザ取得、バイク輸送の手配、装備品の再点検などなど、やることが山のようにあった。それらをひとつひとつ片付けてゆくと、何とか1ヶ月で目処が立った。8月7日。旅が中断したイスタンブールへ向けて、日本を飛び立った。

苦難の幕開け

イスタンブール
10ヶ月ぶりに戻ってきたぞ、イスタンブール。ガラタ橋の近くにあるイェニ・ジャーミィは今日も観光客で賑わっていた

「ヒャホーッ、イスタンブールに戻ってきたぞぉ~!!」
天を突き刺す"ブルーモスク"のミナレット。コブシ回しが演歌にそっくりな"アザーン(お祈りの時間を知らせる声)"、日本語で声をかけてくる怪しいトルコ人、ガラタ橋で釣り糸を垂れる男達...何もかもが懐かしい。「これ、これ、これだよ~」この場所に帰ってきたこと、そして旅が再開したことを実感した。

ところが、一足先にイスタンブールに着ているはずのバイクが、航空会社のトラブルで受け取りが来週へずれ込むことになってしまった。それくらいのこと、僕たちの旅では日常茶飯事、逆にその時間を使ってシリアのビザを取得した。

予想外だったのはバイクの通関。普通ならバイクの車体ナンバーとカルネ書類に記載されているナンバーを照らし合わせ、カルネ書類にポンとスタンプを押したら終わり。10分もあれば終わることが、延々と進まない。空港に隣接する税関ビルにある業者に通関を依頼したのだが、僕たちを事務所に残したまま、担当者がなかなか戻ってこない。今どんな状態なのか? 通関が進んでいるのかどうかさえわかず。状況を聞いても「待っていなさい」の一点張り。「一体どうなっているんだぁ?」「バイクは受け取れるのかぁ!」まるでまな板に置かれたままの魚のような状況が続いた。


親切な通関業者の人
予想以上にバイクの通関に手間取り、受け取りまで2日もかかった。親切な通関業者の人が梱包を解くのを手伝ってくれた

6畳の狭い事務所でヒゲ面のむさくるしい男4、5人と、ひたすら待つこと5時間。ようやく税関のスタンプがもらえたが、これだけでは足りないらしく、明日へ持越しとなった。たかがバイクの引取りに、どうしてこんなに時間がかかるのか?不思議でたまらない。

翌日は朝9時から行動。さすがに午前中には引き取れるだろうと思ったが甘かった。再び延々と待たされ、バイクを受け取った時には午後3時を過ぎていた。ここまで苦労しただけに、バイクを受け取れた喜びもひとしお。通関を最後までお手伝いしてくれた、郵船航空サービス・トルコ在住の田口さんと一緒にバイクをホテルまで運ぶと、3人で祝杯を上げ、喜びを分かち合った。
「さあ、明日は出発だぞ!」

偶然の出会い、家族との時間

イスタンブールで見つけた巨木
イスタンブールで見つけた巨木。幹の太さからかなりの長寿と思われる。道のド真ん中に立っているのに切られないのは、大切にされている証拠

イスタンブールは西アジアを代表する大都市。混雑する市内や郊外に広がる工業地帯の走行を避けるため、フェリーでマルマラ海を挟んで対岸にあるヤロバへ渡った。船を降りると陽射しが刺すように暑い。前回と違っていまは8月、夏真っ盛りなのだ。

乾燥した山間の道を南下する。舗装はほとんど修復していないらしく、所々舗装に亀裂が走っていたり、盛り上がっていたり。時々避けきれずギャップに乗り上げ、バイクごとポーンと飛び上がり、肝を冷やした。
枯れ葉色の草原となだらかな山々を眺めながら、バイクを走らせる。イスタンブールを出て4日目。アクサヒルという町にたどり着いた。地方にある何の特徴もない小さな町だが、バッテリーの残量を考え今日はここまでにする。ウロウロとホテルを探していると、通りがかりの親切なタクシーがホテルまで先導してくれることになった。

喜んで着いてゆくと...あれ?なぜか町を出てしまった。車を降りるとおじさんが「えっ、ホテルだったの? 次の町へ行きたいのかと思った」と苦笑いをする。するとおじさん(アブディルさん)、何かを思いついたらしく車に付いて来いと手招く。数百m先におじさんの家(小さな商店とキャンプ公園を経営している)があり、うちに泊まりなさいと眠るジェスチャーをするではないか。こうなったのも何かの縁と思い、好意に甘えることにする。


アブディルさんとその家族
お世話になったアブディルさんとその家族。言葉は通じないが、気持ちは通じていたような気がする。この出会いは一生の宝物

夕方になると町に住む妹や娘夫婦が遊びにやって来て、賑やかになった。トルコ人は家族をとても大切にする。テーブルを囲んでいると、突然ヒロコがなぜかお手伝いに借り出される。庭の野菜を摘み取ったり、おばあさんの首と肩を揉んであげたり、まるで新しく来たお嫁さんのように忙しく働き回ることに。一方の男連中は、どこもあまり働かないようで、テーブルでのんびり。英語が全く通じないため唯一の手段であるトルコ語の会話集を使って何とか意志の疎通を図ろうとするが、伝えたい単語が載っていないともうお手上げ。お互い「アハハハ...」と笑ってごまかすことになる。

夕食の時間になると家族団らんのテーブルに、僕たちもちゃっかりと仲間入りとなる。チキンや肉詰めピーマン、ピラフなどをお腹一杯頂いた。どれもおいしい。やはり手作りの家庭料理が一番だ。つい数時間前はまさかこんな風にアブディルさんの家族と一緒に食卓を囲むことになるとは、想像もしなかった。目に見えない深い縁を感じるのであった。
翌朝はみんな揃って記念撮影、日本へ帰ったら写真を送ることを約束。ひとりひとりと握手をしてお礼を告げた。短い時間だったけど、人の温もりを感じる幸せな時間だった。

待望のカッパドキア観光

ウチヒサル
カッパドキアで最初に感動したのが"ウチヒサル"。巨大一枚岩の城塞で、鳥の巣が無数にあるのは、鳥の糞をブドウ畑の肥料として使っていたため

焦げ付きそうな灼熱の大平原を走り抜けると、前方に火山が姿を現した。さらにネヴェシェヒールの通り町を過ぎると、今度は砦のような険しい岩山が見えてきた。目を凝らすとその岩山に鳥の巣のように、無数の窓があいている。ウチヒサールだ。ついにトルコのハイライト、カッパドキアにやってきた。

カッパドキアは様々な奇岩やキノコ形の岩、洞窟住居跡などがあるトルコでも人気の観光スポット。僕は2度目だが、ヒロコは2度も機会があったのになぜか行けず。今回3度目の正直でやっと来ることができた。それだけにヒロコの目はすでに爛々と輝いている。

ホテルに荷物を下ろすと、嬉しい再会が待っていた。イスタンブールで知り合った中水夫婦が同じ宿に泊まっていたのだ。ふたりは青年海外協力隊の任地ボリビアで知り合い、結婚した若い夫婦でこれが新婚旅行(それも1年間の予定で!)。このふたり、飾り気がなく自然体で僕たちは大好きなのだ。夕方になると4人で展望地へ登り、カッパドキアの雄大なパノラマを一緒に堪能した。


チャウシン
洞窟住居跡が無数残っている"チャウシン"。昔の人々はここでどんな風に暮らしを営んでいたのだろう? 想像するだけでも楽しかった

翌日は2台のバイクで近郊の見所を散策。まずは"チャウシン"にある岩壁や斜面に作られた洞窟住居跡を見て回る。ここに57年前まで人が住んでいたというからビックリ。複雑に積み重なるように作られた住居群は、いつまで探索しても飽きることがなかった。僕がもし子供の時ここを訪れていたら、一日中かくれんぼをして遊んでいるだろう。

別の意味で次に訪れた"パシャバー"も夢のある場所だった。帽子を被ったようなキノコ岩が密集するその風景は、まるで自然が造り上げた天然のディズニーランド。いろんな角度からキノコ岩を眺め、写真に収めた。
泊まった宿のテラスからは、ニョキニョキ奇岩の森に作られた町"ギョレメ"が一望。僕たちはいろんな角度からカッパドキアの不思議な世界を楽しんだ。

現在地:トルコ・ギョレメ(2007年8月26日付)
総走行距離:37,514km(アジアの走行距離:1,776km)
今回のルート:Istanbul......(フェリー)......Yalova→→Iznik→→Eskisehir→→Konya→→Aksaray→→Goremel
訪問国数:35カ国
文/写真:藤原かんいち&ヒロコ

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