旧車レストア#01(Vespa VNB2)

さーて、いよいよ連載開始です!
記念すべき第1回目は旧車レストア編の第1話から始めてみますが、レストアってけっこう甘くないんです。 「え!? いきなりなに?」って思うでしょうけどレストアの難しさも理解してもらいたいし、レストア記を通してベスパの歴史やパーツの知識なんかをいっしょに学んでいけたらなって思ってます。
だからこの連載のスタートとともに「よーし、オレもレストア始めちゃうか!」なんて勢いをつけたりせずに、まずはじっくりレストアについて知識を深めていきましょう!!

レストアってなに?

  まずレストアを理解することからスタートです。意味は復元ってことなので、「新車時の状態を再現する」が最上級のレストアってことになりそう。そのためには構成パーツをすべてオリジナルで用意する必要があるだろうし、塗装もしかり……ということで集めるための時間もお金も必要なんです。つまりめっちゃ敷居が高いワケですよ。

  そこで完全な再現を目指すのではなく、リビルトパーツ(再生部品)や中古パーツなども上手に使い分ければちょっぴり敷居を下げることが可能に。つまり「どこまで忠実に再現するのか」という復元レベルを決めて、無理なくやり遂げられるレストアを計画することが重要なんです。

  誰でも「どうせやるなら……」と考えだして完成度やレベルを上げてしまいがちですけど、これがすでに失敗の始まり。先に「レストアには時間もお金も必要」と書きましたが、もう一つ、知識も必要となるんです。

  この知識とはベース車のことであったり、部品のことであったり、ベース車を含むシリーズのことであったりもします。正しい知識を身に付けていれば、計画段階で部品を集めるのにどのくらいの時間と予算が必要なのか判断できますし、判断できればそれが自分で取り組めることなのかも想像できるハズなんです。

  無理に完成度やレベルを上げてしまうと、いずれどうにもならなくなって作業が止まってしまうことになりかねません。そうなると庭やガレージの片隅に放置され、どんどんモチベーションも下がっていき、最後はどうにもならなくなって処分……なんて、ときどき耳にするような結末が見えてきちゃうワケですよ。

  とにかくプラモデルのようにキット化されているものとは違うってことを肝に銘じ、しっかりと計画を立てられるだけの知識を身に付けてから挑むようにしましょう。

探偵物語と同型車のP150X

当企画の協力者でもあるMuseo Vespa Giapponeが過去に手がけたレストアの一例がこのP150Xで、TVドラマ「探偵物語」の劇中車をショーへの展示目的で再現したもの

◎パーツの種類
ベスパのパーツは世界中で探せるところも魅力。これは維持していく上で有利な点だと言えますが、以下のような種類があって質も値段も異なるんです。しかも最近はネットオークションの普及によって世界中で探すことができ、部品の種類それぞれに中古という選択肢もあるので慎重に見極める必要があります。だから上手に使い分けるためにも、部品のことだって少しずつ学んでいかないとなんですよ。
【純正部品】
メーカー出荷の車体構成部品でマッチングは最も良い。ただし古い車体のものになると入手が困難だったり、見つけても高額だったりすることがほとんど。またゴムやプラスチックなど、劣化によってそのままでは使えないなんてことも。それとベスパは世界各地で生産されてきたので、生産地の違いでマッチングしないなんてこともあるようです。
【社外部品】
いわゆる車体生産メーカーが用意したものではなく、扱い上ではチューニングパーツやカスタムパーツに分類すべきものもあったりします。それでも新品を入手しやすく、純正部品の代替として通用するコピーパーツ的なものもあったりします。それに割り切った上でチューニングパーツをチョイスすれば、性能面の向上という効果を得られることもあるでしょう。
【リビルト部品】
壊れた部分を直したり、劣化した部分をリフレッシュさせたものがリビルト部品(再生部品)と呼ばれるもの。できの良いものを入手できれば純正部品なみの仕上がりが期待できる代わりに、強度や機能まで再生されているものでなければ効果が得られないこともあるので注意が必要です。

なんでバラバラなのさ?

Vespa 主要パーツ

主要パーツをバラしてならべてみたワケではありません。縁あってMuseo Vespa Giapponeの元にやって来たもので、ほかにもそろいだしたところでレストアがスタートです。

  さて、ここで今回レストアをしていく予定の車両を見てみましょう。「おや?」と思った人が多そうですが、別にレストアのためにバラし終えた状態というワケではありません。   みなさんが思い描くレストアは「気になるモデルや古いモデルを買ってきた、もしくは買おうと思ってるんだけど、程度があまり良くないのでどうしよう? それなら買ってから直そう」とか、「すでに持っている車両を綺麗に仕上げたいから始めよう」というところなんじゃないかと思います。

  だからこの企画に全面協力してくれるMuseo Vespa Giappone(以下ムゼオ)のような、「部品がそろってきたから組んでみようかな」なんてことはやらないほうが無難です。というかどうにもならなくなるのでやめましょう。

  でも、このやめたほうがいいというところにこそレストアを理解する要因があるんです。部品がなんとなくそろうって、じつはその段階でかなり知識もノウハウも要求される高度なレストアの準備段階がスタートしているってことなんです。

  たとえばフェラーリをレストアしてみようというとき、「テスタロッサのベース車を買いました。けっこう部品がありません。なので足まわりは308のものが付きそうだから買ってみた……あれ? 内装もハンドルがないからF40のものを手に入れた……あれ?」……こんなんじゃ上手くいくワケがないってわかりますか?  やはりそのベース車に何が足りていないのかを正しく判断できて、必要となるものをマッチングも含めて正しくチョイスすることが重要なんです。

◎Museo Vespa Giappone
通称ムゼオと呼ばれ、ベスパ・ミュージアムとして一般公開できるよう準備中。今のところさまざまなメディアの取材に対応したり、撮影車両の貸出などを行っている。当企画には全面的な協力を約束してくれた。

VNB2ってなんのこと?

タイヤサイズの違い Vespa

向かって右がVNB2用の8インチホイールで、左が10インチホイール。サイズ感の違いはホイールだけでなく、当然ながらタイヤ外径でも異なってくる

  ちょっとここでベース車のVNB2について学んでみましょう。モデル名(車名)で言うと「ベスパ125」と、めっちゃシンプル。当時のスタンダート的な位置づけの通常モデルと表現するのがしっくりくる、VNBという型式のモデルの2型ということになります。

  ベスパの市販開始って1946年なんですけど、そこから50年代中期過ぎまで、いわゆるフェンダーライトと呼ばれる映画「ローマの休日」の劇中車的モデルが毎年手直しを受けながら継続販売されていきます。

  そしてこのフェンダーライトがベースのセイジョルニというプロダクションレーサーが登場し、その流れをくんだスポーツモデルとして、150GSというモデルがハイエンド版として1955年からラインナップに加わりました。

  でもメーカーとしてはハイエンド版だけではなく、ベーシックラインも販売面で必要と判断したのでしょう。フェンダーライトをベースとしながら、150GSの小さいバージョンという位置づけのモデルを1957年に登場させます。これがVNA1という型式のモデルで、モデルチェンジされながら1966年のVNB6というモデルまで継続生産されたモデルです。

  スポーツモデルだった150GSは、速くなったところでの操作性や安定感を確保するために10インチへホイールが大径化されていましたが、通常版の125では8インチホイールを採用しているので、タイヤ(ホイール)の小さな可愛らしい印象があります。それにこのくらいの年式のモデルでは大きく丸いお尻がとくに印象的で、ベスパらしいフォルムという点では初期の流れをしっかりと受け継いでいるとも言えそうです。

  ちなみにVNA時代はフロントフェンダーが1枚で、VNB時代になって2枚合わせのタイプに変更されています。これは量産に対応させるための改良だと思われますね。そしてVNB1とVNB2ではライトスイッチが異なり、VNB1の涙滴型からVNB2で四角いレバータイプになります。さらにVNB1にはメーター前側の赤いインジケーターがあるのに、VNB2では廃止されています。なおVNB3からはハンドルが上下分割ではなくなるという違いが見られます。

型式 製造年
VNA1 1957~1958
VNA2 1958~1959
VNB1 1959~1961
VNB2 1961
VNB3 1961~1952
VNB4 1962~1953
VNB5 1963~1964
VNB6 1964~1966
Vespa VNA

初期のベスパらしさを感じさせる"丸み"と"ボリューム感"を備え、1957年からラインナップされたVNA型。その後VNB型へとモデルチェンジし、最終的に1966年まで生産

今回のレストアの進め方

Vespa VNB2フレーム

知り合いの情報が縁となり引き上げることになったフレームなど。ベスパのカタチなのでボディパネルと思われがちだが、モノコックフレームなのでこのような形状をしているのだ

  それではムゼオならではともいえる今回のレストアについて、一般的なレストアとの違いなどを確認してみましょう。もしもレストアを始めてみるときが来たとして、ムゼオのやり方はやめようと言いましたが、取り入れるべきところや真似すべきところは知識として学んでおいて損はありません。

  まず一般的なレストアではカタチになっている車両がベース車となるワケで、その場合は欠品箇所もそう多くないでしょうし、正しくないパーツが使われている箇所も多くないでしょう。なによりカタチになっている時点でムゼオの取り組むレストアとは明らかに違っているワケです。

  そのムゼオが取り組むレストアとは、知り合いのコレクターから何台かの車両を引き上げる際「もう必要ないから、これらもちょっと引き上げてくれないか?」と、部品取り車両とストックパーツについても引き上げたことが発端になっているそうです。とは言え、そのとき引き上げた荷台とエンジンとフロントフォークとハンドル、それにリヤサスとスタンドなど(Photo A/「なんでバラバラなのさ?」の欄を参照)は「いずれ使う機会もあるかなぁ」くらいの気持ちでずっと持っていただけで、このタイミングでレストアを意識したワケではないそうです。

  そして次に手元に来たのがフレームと左右のサイドカバー、フロントフェンダー、ハンドルの下側だけというもの(Photo B)。知り合いからの連絡で「とあるお店にずいぶんと年月が経ってしまったフレームが置いてある」と言うので見に行き、そのとき手持ちのパーツと合わせればざっくりカタチになると思いついたことから話してみたところ引き上げることになったそうです。

  それで持ち帰ってからフレーム番号とエンジン番号を確認してみると、どちらも「VNB2……」だったことからビックリ。わずか1年だけしか作られていないVNB2という型式(Photo C)でそろっているなら、せっかくだから起こしてみたいなと思い始めたところが具体的にレストアしてみようというきっかけになったそうです。

  ただしこの段階では組み出してもホイールがなく自立できない状態だったため、まずホイールを探し始めることからスタートしたそうですけどね。  そしてその結果、メッキの2本とメッキじゃないスペア用ホイールを別々に入手できた(Photo D)ので、いよいよ作業を始めていけるようになったのだそうです。  その作業の内容ですけど、「まずなにが足りていないか、なにがダメなのかを洗い出す必要がありますが、そういったことはバラけてるとわからないので、1度仮組みしてカタチにすることで確認していこう」ということのようです。

 ……ということで、旧車レストア編の第2話ではじっさいにフレームに手持ちのパーツを組付けていくことになるようです。

リヤタイヤの左側上部

車種によって異なるが、リヤタイヤの左側上部のフレームにVNB2で始まる車体ナンバーが確認できる。なおベスパクラブジャパンホームページでは車体ナンバーから製造年を特定できるので、ベスパオーナーならチェックしてみるといいだろう

ホイール

奥側のタイヤ付きホイール×2本と手前のホイールのみを用意できたが、タイヤは交換の予定で、ホイールのみにもタイヤを装着してスペアとして搭載予定とのこと

それでは次回をお楽しみに!