ヒストリックモデル#01

後継機種rallyとの比較

Vespa180 ヒップライン

どのベスパもヒップまわりが印象的ですが、丸くて大きいというイメージとはかけ離れ、エッジの効いた巨大なヒップラインがSSならではの魅力の一つだといえそうです

車体まわりに目を向けると、パッと見の印象は「一番デカイ」となります。とくにお尻まわりの迫力は群を抜いていて、一番と言っても間違いではないでしょう。じっさいにSSの後継モデルにあたるrally(ラリー)と比較してホイールベースが長く、フェンダーやサイドパネルも大きさが目立っています。

しかしrallyとはレッグシールドが同一で、レッグモールも同じタイプのものが使われています。それとスペアタイヤハンガーの形状がいっしょで、フロントボックスの形状が異なっていたり、サイドパネルはSSのほうが大きいといった相違点もありました。

細かな部分ではフロントフェンダーとサイドパネルのアルミトリム(飾りモール)が、160GSのものよりも簡略化された短いタイプを採用しています。またなによりも特徴的な台形フォルムのヘッドライトがSSを印象づけていました。

ちなみにSSらしさを象徴する台形ヘッドライトですが、米国市場向けでは安全基準の影響でラウンドヘッドライトにコンバートされていました。このラウンドヘッドライトはrallyやSprintにも使用されたシールドビームタイプだったりします。なお米国市場向けの丸目なSSには、3種の異なるテールライトが存在していました。

レアアイテム3

当時の各国で用意されたカタログあれこれになります。写真が同じでも、文字だけが仕向地によって異なっていたりするものがあったりしますので、集めてみるとけっこう楽しめます。

インプレッション

ときどきSSに乗った経験のある方々から「60年代半ばころの生産モデルなのにP200にそこそこついていける。だから長距離があまり苦にならないんだけど、足まわりがちょっとショボイんだよね」なんて話を耳にします。

P200といえば1978年の登場ですから80年代のモデルと言って差し支えないでしょう。……とするなら、この話はかなりの速さということになります。足まわりについては発展途上段階だったと判断できますから、速さだけが突出した印象に感じられますね。

さてさて、じつはオーナーさんのご好意で試乗することが叶いましたので、なかなか機会のないヒストリックモデルのインプレッションもお届けしましょう。

エンジン始動後の車体にまたがって、まず感じたことが「振動はあるけど、200ほど強烈な類ではないなぁ……」です。スポルトの名を冠したパワーユニットだけに、けっこう荒々しさだったりレーシーな雰囲気なんかを想像をしていたワケですよ。あ、でも肩すかしでガッカリしちゃったという話ではありません。

Vespa 200 Rally

Rally200/SSの後継モデルであるラリーは当初180でスタートしましたが、写真はモデルチェンジ後の200ccバージョンです

P200E

P200E/1978年に登場後、PXと名前が変わりつつ2014年現在も継続(途中でブランク期間あり)生産されるロングセラーモデルです

いざ走りだしてみると、いい意味で期待を裏切られましたね。決してピーキーに回っていくエンジンではないんですけど、ピストンバルブ特有のツキの良さとダイレクトなパワー感、そしてルーズなシフト&アクセルワークに対応する懐の深さが大いに魅力的だと感じられました。しっかりと湧き上がるパワーを感じながらツキのいいエンジンを右手で操る楽しさが味わえるので、荒々しさやレーシーな味付けがなくてもキビキビした走りは十分に堪能できますから。

今回は高速域まで試すことが叶いませんでしたけど、力強さを伴いつつ、思ったよりマイルドなパワーの出方であることでほど良く乗りやすいイメージを持ちました。郊外の信号が少ないエリアでの試乗だったこともあり、早めのシフトアップで流すように走らせるのが気持ち良いいなといったところです。力もあるので、3速ホールドでずっとそんな風に気楽に走れる心地良さが魅力だったりします。

刺すような鋭い加速や、ゼロスタートでズバッと出て行くような感覚は弱いんですけど、2stらしさも備えたフィーリングは独特でおもしろいと感じられました。グランスポルトがデビューした当時、前述していますけど1955年に150ccで100km/hを実現しているワケです。それを160ccにスケールアップする際、速さに乗りやすさがプラスされました。そして180ccとなり、スポルトの名を受け継いだスーパースポルトに進化を果たします。ここでピアッジオ社は最高速を5km/h引き上げたと同時に、扱いやすさも上乗せしてきたという印象を受けました。

グランスポルトは市販レーサーと言ってもいいほどのスペックを誇っていましたが、乘りものとして乗りやすさと扱いやすさを上乗せする必要があると判断したピアッジオ社は、だからこそSSでスポルトの系譜を断ち切ったのかもしれません。もちろんこれ以後にもスポーティなモデルは何度か登場しますが、スポルトという名を復活させないのはスポルトの定義を満たしていないということなのでしょう。

異色のスパイ御用達マシン

「Dick Smart 2.007」という1967年イタリア映画の劇中車として、主役のディック・スマート専用に用意されたのがベスパ・アルファです。ご覧のように変形してヘリコプターとなるスパイ向け特殊車両で、ベースとして使われたのが180SSだというからびっくりしちゃいますね。タイトルで検索すれば動画もチェックできるハズですよ。

【主要諸元】
モデル名 Vespa180SS
ボディカラー ブルー、レッド、ホワイト
型式名 VSC1
製造年 1964-68年
総生産台数 3万5,699台
型フレーム形式 VSC1
全長×全幅×全高 1,770mm×670mm×1,045mm
軸距 1,230mm
最低地上高 220mm
車両重量 116kg(乾燥)
燃料タンク容量 9.0L
燃料消費率 40km/L
最小回転半径 1,400mm
最高速度 105km/h
エンジン型式・種類 空冷2ストローク単気筒
総排気量 181.2cm3(cc)
内径×行程 62.0mm×60.0mm
圧縮比 7.7:1
最高出力 7.4kW[10.06PS]/ーーーrpm
燃料供給装置形式 Dell'Orto・SI 27/23(キャブレター)
始動方式 キック
点火装置形式 ポイント式
バッテリー 6V
2stオイル混合比 5%
クラッチ型式 湿式多板
変速機形式 常時噛合4速ハンドチェンジ式
ギヤレシオ 1速14.47:1/2速10.09:1/3速7.48:1/4速5.71:1
ファイナルドライブ ダイレクトドライブ式
タイヤサイズ(F/R) 3.50×10"/3.50×10"
ブレーキ形式(F/R) φ125mmドラム/φ127mmドラム
懸架方式(F) ダンパー×スプリング一体型シングルユニット
懸架方式(R) コイルスプリング付属ダンパーユニット

レアアイテム4

当時のイギリスの「SCOOTER WORLD」にインプレやカスタム紹介、モッズ仕様・EDDY GRIMSTEADの広告などが掲載され、ほかにもさまざまなショップ広告にSSが多用されていました。

【ディテール】

Vespa180SS 左グリップ

左グリップの根本に1〜4速(1と2の間のドットがニュートラル)のギヤポジション表示があり、レバーでクラッチ操作しながらシフトして4速ミッションから適切なギヤを選択します

Vespa180SSのメーター周り

160GSと同じクラムシェルスタイルのスピードメーターですが、メーターケーブルの径が太くなっています。ハブの中のメーターギアは、ギア部分のみプラスチック製となります

右グリップ

右グリップ根本のスイッチBOXは左端がライトの3段階切替でON/ポジション/OFFとなり、右にハイ&ロー切替、その下がホーン、スイッチBOXの右脇にキルスイッチを装備しています。(バッテリー付きモデルはハンドル上部にメインキーが付きます)

ダンパー&スプリング

ダンパー&スプリング別体式から160GS時代に一体型に改められた足まわりは、フロントフォークが若干異なりますが基本形状はSSとの2モデルだけしか使われていません。

Vespa180SS フロントフェンダー

フロントフェンダーは恐らくベスパ史上で最大級という大きさとなっています。長さと深さと幅……どれもが大きく、クレストとハブまわりが160GSと共通のものになります

フロントホイール

左右均等幅の分割リムを使った専用ホイールを採用しています。じつはベスパのホイールリムは合わせ式で、通常は深さの異なるリムを組合わせたホイールなんです

フロントトランク

シート下に収納スペースはありませんが、キー付きのフロントトランクを装備しています。容量的にそこそこ収納でき、シート前方下部の荷掛けフックと合わせてけっこう重宝します

180ccエンジン

ピストンバルブの最終型にして最大排気量となる180ccエンジンを採用しています。160GSのボアアップ版で、排気量を引き上げられたことへの強化対策が施されていました

サイドパネル

サイドパネルの大きさ比較では、180SSのほう(赤いほう)がひとまわり大きいことがわかるハズ。ちなみに比較用に用意したのはPX系派生モデルのPX200GSのサイドパネル

今回はこれで終了です

さて「ヒストリックモデル#01」はいかがでしたか?

こちらは条件がそろわないとお届けできないため、第2回の予告ができません。

それにオーナーさんのご好意に頼らざるを得ないため、必ずインプレッションまで実現できるという約束もできませんが、それでも魅力あるヒストリックモデルの取材を計画していますので、次回もぜひぜひお楽しみに!

それでは次回をお楽しみに!