BBB MAGAZINE

  • 大人のたしなみとしてベスパに接してみよう!

    2015.09.02 / Vol.15

    ヒストリックモデル #04

CREDIT

    • ライター
    • 執筆

    隅本辰哉

    • 撮影

    隅本辰哉

    • バイク

    Vespa

Vespa ET2_ET4

新シリーズとしてスタートさせたスモールで遊ぶ編ですが、一気に3回も連続させちゃいましたので今回はヒストリックモデル編#04でいってみたいと思います。
今回クローズアップするのはET2&ET4です。基本的に共通ボディをもつシリーズモデルですが、搭載エンジンの種別(2ストロークor4ストローク)によってモデル名を変えている点が特徴です。なによりベスパとして初の本格オートマチックラインとしてデビューしたモデルだったりしますから、そこのところをじっくり見ていきましょう!

50ET2登場の背景

Vespa 50ET2

1995年のピアッジオは、ベスパを誕生させてから50年という節目の年を迎えていました。それまでベスパといえばハンドチェンジというイメージが強かったんですけど、この記念すべき節目の年に"未来を見据えたオートマチックラインの確立"というチャレンジが始動します。その牽引役としてピアッジオが世に問うたのが50ET2であり、機械式直噴インジェクション搭載車の発表が当時話題になりました。ちょうど排ガス問題も世界的に厳しくなっていく時代だったので、そこも視野に入れていたのは間違いないところでしょう。
新しいチャレンジだったとはいえ、スチールモノコックボディというベスパ最大の特徴はしっかり受け継いでいます。そして50cc用のパワーユニットにはベスパお得意の2ストロークユニットが採用されていたのですが、排ガス問題では不利とされる2ストロークだけに、その対策としてピアッジオの用意した仕掛けが機械式直噴インジェクションでした。
排ガスのクリーンさだけなら4ストロークが優位でしたが、当時はまだパワーの面で2ストロークに分があったため、なんとか2ストロークのほうで排ガス問題をクリアしていく方法を模索していたワケです。じつは欧州マーケットでも当時は50ccクラスがエントリーユーザー向けとして、とても多くの若者に支持されていたんです。だからこそ"パワー"や"速さ"はセールスに直結するキーワードとしてピアッジオもこだわったんだと思います。

Vespa 50ET2_R
Vespa 50ET2_L

【主要諸元】

モデル名 Vespa50ET2
型フレーム形式 スチールモノコック
全長×全幅×全高 1,760mm×670mm×--mm
軸距 1,280mm
シート高 805mm
車両重量 92kg(乾燥)
燃料タンク容量 9L
燃料消費率 48.5km/L(40km/h)
タイヤサイズ(F/R) 100/80-10/120/80-10
ブレーキ形式(F/R) ディスク/ドラム
懸架方式(F) シングルユニット
エンジン型式・種類 強制空冷2ストローク単気筒
総排気量 49.3cm3(cc)
内径×行程 40.0mm×39.3mm
圧縮比 11.0
最高出力 --kW[--PS]/--rpm
最大トルク --N・m[--kgf・m]/--rpm
燃料供給装置形式 マネッティ・マレリ製機械式直噴インジェクション
始動方式 セルフ/キック併用式
点火装置形式 CDI
クラッチ型式 オートマチック
50ET2のメーター周り
左にVEGLIA製スピードメーター、右にフューエルメーター+ウォッチを配置した見やすいメーターパネル
ET2バッヂ
フロントボックス右下あたりに車名の「ET2」とインジェクションを表す「iniezione」を組み合わせたバッヂを装着
iniezioneバッヂ
ボディ左サイドにもインジェクションをイタリア語で表す「iniezione」のバッヂ。インジェクション仕様を主張
キック付き
2ストローク50ccユニットに、今では珍しいキックペダルが付く。キック始動できることは安心感につながった
機械式のインジェクションユニット
マネッティ・マレリ製インジェクションユニットを装備。電子制御式ではなく、機械式だったことも話題だった
2stオイル注入口
写真で見て左が給油口、右は2stオイル注入口。ベスパは自分で混ぜる混合式のイメージだが分離式を採用

グッズ&資料

Vespa ET2/ET4 ダイキャストモデル
ET2/ET4アクセサリーカタログ

デビュー当時のET2&ET4は日本国内で今一つパっとしなかった印象がありました。やはり駆動方式をオートマチックとしてデザインもガラっと変更してしまったため、長期ユーザーやファンたちが受け入れ難かったというところは少なからずあったように思います。それでも世界的にはベスパの進化を歓迎する流れがあり、ダイキャストモデルやポストカードといったベスパに関するお約束のグッズ類(写真a)が数多く流通していました。そうして当初国内ではイマイチだったETシリーズも次第に評価され、"新しいオートマのベスパ"として徐々に売上も伸びていきます。そうなってくると「他人と差をつけたい」、「カスタムでカッコ良く仕上げたい」などの欲求も高まってきますよね。そこで注目したいのがオプションパーツやアクセサリー類のカタログ(写真b)だったりします。もちろん社外品も世界中で用意されていましたけど、やはりフィット感やマッチングは純正品に強みがあったように思います。

コンセプトの見直し

Vespa 125ET4

50周年記念モデルとして発表された50ET2が発売されるようになると、共通ボディに4ストロークユニットを搭載する125ET4も登場します。このころのピアッジオは、それこそ社運をかける勢いだったETシリーズに対して相当な力の入れようだったんじゃないかと感じられました。そこにはやはり50年の重みという部分もあったハズですけど、新世代のクリーンなエンジンが求められ、さらに"女性でも足をそろえて乗れる"から"だれでもカンタンに乗れる"にベスパが本来コンセプトのひとつに掲げていたものを見直したようにも思えました。これは、より多くのユーザー獲得を視野に入れていたからこその展開だったんじゃないでしょうか。
ただ当初はビンテージシリーズ(50Sなどのスモールボディ系で最盛期には国内で年間9000台を販売したこともあります)ほどの勢いがなかったのも事実です。その辺りは賛否両論あったエクステリアデザインによるところが大きかったように思います。よく未来的と言われてもいたので、デザイン的には少々奇抜すぎたのかもしれません。ただ......物のデザインとして賛否こそあれ、ETシリーズにはピアジオもかなり気合いが入っていて、ゼロスタートだった初のオートマチックラインを育てていこうという印象を強く受けました。
じっさい市場での反応とは逆にCMやイベントへの登用は多く、商品カタログに使われたり、食品メーカーがブランドイメージの赤いETでデモ的な試乗イベントをやったこともありました。どうやらことのほかクリエイトな世界からはETの印象も良かったといえそうです。またこうした流れに呼応するように、この時期にじわじわと販売台数も伸びていきました。

125ET4_L
125ET4_R

【主要諸元】

モデル名 Vespa125ET4
型フレーム形式 スチールモノコック
全長×全幅×全高 1,760mm×670mm×--mm
軸距 1,280mm
シート高 805mm
車両重量 104kg(乾燥)
燃料タンク容量 9L
燃料消費率 45km/L(40km/h)
タイヤサイズ(F/R) 100/80-10/120/80-10
ブレーキ形式(F/R) ディスク/ドラム
懸架方式(F) シングルユニット
エンジン型式・種類 強制空冷4ストローク単気筒
総排気量 124.2cm3(cc)
内径×行程 57.0mm×48.6mm
圧縮比 11.6
最高出力 8.83kW[12PS]/7,750rpm
最大トルク 9.8N・m[1.0kgf・m]/6,500rpm
燃料供給装置形式 --
始動方式 セルフ/キック併用式
点火装置形式 CDI
クラッチ型式 オートマチック
ET4ハンドルスイッチ(左
上からハイ/ロー、ウインカー、ホーンスイッチ。オプションでグレー、ライトブラウン、ダークブラウンのグリップを設定
ET4のメーター周り
ベリア製スピードメーターはMAX90km/h表示の50ccに対して、MAX140km/hまで表示されるタイプを採用
ET4右グリップ周り
右側はライトスイッチとセルボタン。ただし常時点灯とされたモデルも存在し、その場合ライトスイッチはダミー
ET4フロントボックス
フロントボックスは小物や書類程度の収納容量だが、あるとないでは大違い。それなりに使いやすく便利な装備
シート前に荷掛フック
シート前端の収納式荷掛けフックも重宝する。フロントボックス側に荷掛けフックがある車両と異なり使いやすい
ET4 リーダーエンジン
通称ノンリーダーと呼ばれる初期型エンジンから変更され、ピアジオ傑作ユニットのリーダーエンジンが搭載される

整備性の良さ

メットイン
取り外し可能
キャブが見える

じつはオートマチック系ベスパのシート下には、形状こそ選びますがメットインを可能とする収納スペース(写真c)が設定されています。ハンドチェンジ系ベスパの大半は収納スペースを装備していませんでしたが、日本製スクーターとの競争を余儀なくされるオートマチック系では無視するワケにはいかなかったからでしょう。この収納スペースには独特の仕掛けがあって、じつは通称バケツなどと呼ばれる容器が脱着式(写真d)となっているんです。このバケツを取り外すことで、エンジンやキャブレター(場合によってはインジェクション)などに瞬時にアクセス(写真e)できるため、オートマチック系ベスパの整備性の良さは折り紙付きなんです。

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