ユーザビリティ向上により完成形に至ったスポーツスペシャリティ

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160GS MK-2

  狙いが"特別なハイエンドモデル"であったとしてその方向性はいくつもあるといえますが、ピアッジオの用意した回答は"コンフォータブル"でした。たとえばハイスペックを貫き通すという選択だってあったのにもかかわらず、排気量を上げていながら出力も最高速度も先代の150GSと同程度のままとしたワケです。むしろピアッジオからは、時代の要求にマッチする方向性として高性能であることは前提としつつ"上質"や"快適"を上乗せしていこうという意志が感じられます。

  そうして誕生した160GSでしたが、いざ使ってみると実用部分に少々不満の声があったのでしょう。そこでピアッジオは実用面の強化を急務と判断し、早々に思い切ったマイナーチェンジを断行。なんとMK-1の特徴だったメインフレーム後部のバックポケットを廃止して、後付けのフロントボックスを装備するというもの。これにより完成したMK-2は収納力が格段に増し、実用性がグンと高められていました。ほかにもナンバーブラケットを装備していたMK-1と異なり、直にナンバーが装着できるようリヤフェンダー形状が変更され、装着穴を4つ(国内規格とは異なるため)としています。さらに黒いシート表皮への変更、そしてエアクリーナーボックスの形状変更&エンジンマウント部の補強簡略化などが相違点でした。

  こうしてMK-2へと進化した160GSはスポーツの系譜でありながら"コンフォータブル"な方向で磨き上げられたことにより、新たな成功バリエーションとして"スポーツスペシャリティ"というカテゴリーを確立することになったのです。

160GS MK-2(1964年式/owner:Seiichi Okazaki)
優美で完成度の高いとされたデザインはそのままに、実用性向上をテーマに幾つかの改良が施されたのがMK-2なんです。なお撮影車両はリプロシートに変更されています

通称トサカと呼ばれるフィン

150GSの最終型VS5から受け継いだインパネまわりの特徴として、メインキーの前と後ろに通称トサカと呼ばれるフィンが付きます

後付けボックス

MK-2では後付けボックスの装着で高い実用性を確保しています。コーションステッカーとボックスのキーはオリジナルではありません

伝統の片持ちサス

伝統の片持ちサスはスプリングとダンパーを一体化して大幅変更され、深さのある幅広リムタイプのホイールが新採用されています

ビッグタンク

ハイエンドだけに若干不利な燃費をカバーするために嵩上げされたビッグタンクを採用しています。これで容量を増やしたワケです

P/PXシリーズ

MK-1とは形状が異なり、蛇腹ゴム両脇のエアクリーナーBOXと空気取り入れ口のエルボーはアルミ地むき出しなのが正しい状態です

リヤフェンダー

ナンバーブラケットを廃止して、直接ナンバーを固定するように変更されました。リヤフェンダー面も平坦に形状変更されています

参考資料としてご覧ください

◎参考資料1/当時の車両価格
※価格は当時の輸入元である東急商事のもの

160GS24万7000円
150GL20万3000円
スバル360セダン36万5000円(比較参考用)

◎参考資料2/オリジナルパーツ

形状はMK-1もMK-2も同一ですが、MK-1の表皮はグレーでベルトもグレー(撮影時の光の加減で色が変わって見えてしまっているのはご容赦ください)。パイピングの色はMK-1が紺、MK-2がグレーです。そしてどちらもアキュラ製(AQUILA)となります。なおMK-2用シートのベルトはアクセサリーが使われていて正しい状態とは異なります

1960年代に使われていたサフェーサー(カンタンに言うと塗装のための下地用塗料)はクリーミーな茶色が正解。ちなみに1950年代だとレンガっぽい赤みがかった茶色のサフェーサーが使われていました。撮影したサイドパネルはMK-1とMK-2のどちらにも使える新品ですが、今どきの新品部品のように見えないのは経年によるものです

今回はこれにて終了!

さて「ヒストリックモデル#07」はいかがでしたか?ベスパ生粋のスポーツバージョンとしてあこがれる人も多い"GS(=グランスポルト)"という称号の与えられた160GSですが、150GSとは違ったアプローチによってスポーツスペシャリティというポジションを確立していきました。レーシングの直系だった150GS、後のGT系4stATベスパへの流れを生み出したPX200GS BME。……ボクとしてはこのように解釈していて、どの時代の"GS"にもしっかりと意味や役割があったのだと思っています。いずれ折を見てそんなヒストリックモデル紹介もお届けしたいものです。

それでは次回をお楽しみに!