前回は「レストア寄稿-プリマセリエ編」の第2話として、サドルシート&フライホイールカバーの下準備的作業を行いつつ、リヤサスの再利用に伴う黒染めスプレーによる見た目の仕上げに着手……といった内容まででした。
  さて今回、相澤さんはどんな作業と研究結果を披露してくれるのでしょう?

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まずは前回のおさらいです

ベスパ50カタログ

  当時のベスパ50カタログで、ピアッジオは「for the whole family/家族全員のために」という見出しを付けています。ベスパ50の登場した時代背景は「モータリゼーション」と表現されるほど大衆の目が自動車に向いていましたから、4輪+2輪の6輪生活的なニュアンスでこの魅力的な"エンジン付きのミニマムな移動手段"をアピールしていたのかもしれません。

  読者である相澤さんから寄稿していただき、それをちょっとだけ構成し直してお届けしている「レストア寄稿-プリマセリエ編」。まずは第2話をおさらいしつつ、サクッと第3話に入っていくことにしましょうか。

  前回、手始めに手を付けた箇所と言えばサドルシートでした。探し出して手に入れたオリジナルシートではありますが、それなりにヤレていたため手を入れる決断をし、表皮を剥いでブラスト処理後にシルバー塗装まで済ませています。と、ここで相澤さんは一気に3タイプのサドルシートについて独自の研究結果を披露してくれています。

  さらに海外オークションで手に入れたフライホイールカバーについては、最初期タイプならではの形状&サイズ感に触れつつ再生まで漕ぎ着けています。それとリヤサスは装着されていたものがオリジナルだったこともあり、綺麗に仕上げて再利用するとしています。

  さて、ここからはいよいよ今回の作業メニューに突入です!

サドルシートを仕上げる

  今回も相澤さんのレストア日記「愛しのプリマセリエ」からの転載で構成していきますが、作業内容を分かりやすくするために少々加筆させていただいています。もちろん可能な限り原文のままを目指してはいますので、相澤さんらしさを感じられる記事としてお楽しみください。以下は相澤さんのレストア日記・第3回からの転載記事となります。

  前回の作業で所謂"下準備"を終えた段階のサドルシートですが、これに使用するカバー(シート表皮)を調達したので今回はその作業からになります。カバー自体は高品質なリプロパーツを多数取り揃えることで評判のマウロ・パスコリ製(Photo-1)にしました。最初期モデルだけが採用した"ダークブルーの表皮×白ステッチ"を忠実に再現できているのが、マウロ・パスコリ製に決定した理由です。ちなみにその後は"黒の表皮×黒ステッチ"に変更されています。

  前回の作業で骨格剥き出しの状態(磨いて塗装済み)となったシートフレームに、この最初期モデル仕様のカバーを被せるんですが、まずは中敷きのゴムが劣化していたので3mmのゴム板を使って作り直します。これは現物合わせで型紙を切り出し(Photo-2)、その型紙に合わせてゴム板のほうも切り出して作りました(Photo-3)。

  それからカバーのほうですけど、こちらは取り付け方法についてもオリジナルを忠実に再現してみました。その方法とは、サドル前方向側の左右3箇所を留め金具で固定するというものです。そうしてから後端側をボンドで接着(Photo-4)。その結果、ご覧の通りバシッと仕上げることができました(Photo-5)。

サドルシートのブランドバッジ

  研究熱心な相澤さん、今回も"相澤調べ"としてサドルシートのブランドバッジについて研究結果をまとめてくれました。こういうことってマニアを自負するような人にとっては今さらな内容であっても、旧車やレストアのビギナーな皆さん、それにそもそもベスパに興味を持ちだしたばかりの人たちにとっては貴重で有意義な情報だったりするものです。そういう意味でも相澤さんのような存在はビギナーに欠かせないハズです。

  さて本題です。ここで言うブランドバッジとはベスパ50が採用するサドルシートの後端に付けられるロゴプレートのことなんですが、まずこのサドルシート自体が自社(ピアッジオ)製ではありません。AQUILAというメーカーから供給を受けて装着されたものになります。今回の作業ではこのサドルシートも張替えてリフレッシュしてしまおうということなので、計画に合わせて用意したのがリプロのブランドバッジなんですよね。

サドルシートのブランドバッジ

  このバッジ、写真で確認できる通りサドルシート後端にリベット留で装着されるものなんですよ。それで写真上側に並べた手持ちのものが今回用意したリプロ品なんですが、写真下側のオリジナルと比べてしまえば雰囲気の違いがお分かりいただけるでしょう。経年による差を差し引いても、書体まで含めてやはりオリジナルの造りには到底及びません。

  そこで今回、相澤さんは元々付いていたオリジナルのブランドバッジを再利用することに決めたということです。再利用にあたっては歪みを補正し、塗料が剥げた箇所はプラカラーによるタッチアップ処理。リベットもリプロ品とは全く違う大きさと作りなので、錆を取ってから再利用しています。

  なおベスパ50の最初期型に使われるサドルシート後端のブランドバッジはよくある"CONTINENTALE"バージョンではなく、“MADE IN ITALY”が正解ということです。

剥いで剥いで剥ぎまくる!

  注1)「ハンダで埋める」のハンダとは、リード線と基盤をつないで固定する際に使うハンダのこと。ハンダゴテで加熱され溶け出したハンダは場所によってパテよりも使いやすいことから、常用する人もいる補修手段

  ここからは相澤さんが最もこだわって取り組んだんじゃないかと感じられる塗装について踏み込んでいくようです。さて、いったいどんなこだわりを見せてくれるのでしょう?

  続いてはサドルベース(台座)です。 オリジナル塗料を剥がすのは忍びないのですが、ここは"漢らしく"一気に剥離していきます。一気にとは言っても、カップブラシだけで全部剥ったので実はけっこう時間がかかってしまいました(Photo-6Photo-7)。そしてその際、写真は撮り忘れちゃったのですがボルト穴周辺に細いクラックを発見。クラックは1本だけだったので、ハンダで埋めてしまいました(注1)。

  サドルシート自体は、薄い鉄板のサドルベースに4本のボルトで固定します。見た目の感じだと、ちょうどサドルがちょこんと乗っているような印象で、そこが最初期型のチープでクールな特徴なんです。だけど、やはりこの仕様では台座に負担がかかり過ぎていたんでしょうね。以降は改良され、ガッチリしたサドルベースに変更されていますから強度的な問題だったのだろうと推測できます。話を戻しましょう。オリジナル塗装を剥がし終えたサドルベースは、表面だけでなく裏面にもサフェーサーを吹き付けて塗装に備えます(Photo-8Photo-9)。

  ここまで来たら、次はいよいよ塗装工程へと進んでいきます。下準備の整ったサドルベースからさっそく取りかかっていくワケですが、ここで使用する塗料について触れておきたいと思います。現在では一般的にウレタン塗装と呼ばれる方法で塗装されることが一般的なんだと思いますが、今回は敢えて60年代ころに主流だったラッカー塗装を選択してみました。そもそも改良や進化は必要に応じて行われるものなので、塗料も塗装方法も、そして塗り上がりについても一般的にはウレタンのほうがいいとされているワケです。だけど感覚的な判断ですが、ボクには「見れば見るほど魅了される深い味わい」と感じられるラッカー塗装をあきらめられなかったんですよ。……とまあ、そんな理由によるこだわりなんですけど早速塗装してみましょう。我流ながらこれまでに経験してきたレストアでマスターした塗装テクニッックですが、どうにかこうにかご覧いただけるレベルに塗り上げることができたんじゃないでしょうか(Photo-10)。なかなか良い色じゃないかと自負してるのですが、皆さんいかがですか?

  さあ、塗装後はペーパーで水砥ぎしてからコンパウンドでがっつり磨きます。するとラッカーでもまわりが映るくらいにテロ〜ンと仕上げることができました。この後はすぐにでもサドルを組みたい所ですが、しばらくは我慢我慢。最低一ヶ月は寝かせて塗料を乾燥させる必要がありますからね。