ヒストリックモデル #02(PX125T5)

専用ボディにも注目

続いてボディワークにも目を向けてみましょう。じつはPX125 T5ってエンジンやキャブだけがスペシャルってことではないんです。ボディまわりも通常モデルとは異なる仕様のオンパレードだったりするところがPX125 T5のスゴさを象徴しているようです。だってPX125 T5のためだけに、通常モデルとは別の専用ボディパーツ(後にボディパーツを流用したPX200 GSというモデルが登場しますが、この段階ではPX125 T5のためだけです)を作ってしまったんですよ。いや、スゴいことです!

【主要諸元】
モデル名 VespaPX125 T5
ボディカラー レッド
型式名 VNX5T
製造年 1985~
総生産台数 --台
型フレーム形式 スチールモノコック
全長×全幅×全高 1,760mm×695mm×1,110mm
軸距 1,235mm
最低地上高 --mm
車両重量 105kg(乾燥)
燃料タンク容量 8.0L
燃料消費率 40km/L
最小回転半径 --mm
最高速度 110km/h
エンジン型式・種類 空冷2ストローク単気筒
総排気量 123.5cm3(cc)
内径×行程 55.0mm×52.0mm
圧縮比 11.3:1
最高出力 8.9kW[12.1PS]/6,700rpm
燃料供給装置形式 Dell'Orto・SI 24/24G(キャブレター)
始動方式 セル/キック併用式
点火装置形式 CDI
バッテリー 12V
2stオイル混合比 1:50(2%)
クラッチ型式 湿式多板
変速機形式 常時噛合4速ハンドチェンジ式
ギヤレシオ 1速16.43:1/2速10.98:1/3速7.60:1/4速5.82:1
ファイナルドライブ ダイレクトドライブ式
タイヤサイズ(F/R) 3.50×10"/3.50×10"
ブレーキ形式(F/R) φ--mmドラム/φ--mmドラム
懸架方式(F) ダンパー×スプリング一体型シングルユニット
懸架方式(R) コイルスプリング付属ダンパーユニット

力の入れ具合ハンパなし!

PX200 GS

200cc版だけど、いちおうボディデザインが125cc版と同じなので、PX125 T5と車体デザインの違いを確認してみてほしいです。通常モデルのほうも80年代のテイストを取り入れていますが、比べるとベスパらしい丸みが感じられますね

  ちょっと話が横道に逸れちゃいましたけど、エンジン、キャブレター、そしてボディ……こうして並べ立てると確かにP/PXシリーズをベースにしているのは間違いないんですけど、ここまでやったとなると単なる派生モデルと言うより、Newモデルと言ってしまったほうがしっくりくるくらいだと思いませんか?
いわゆる誰でも知っている"まーるいライト"で可愛らしいフォルムのベスパとは明らかに異なるデザインエッセンスが盛り込まれ、角々っとした"これぞ80'sデザイン"さながらの仕上がりです。なんと言っても80年代に大流行した角形ヘッドライトを採用したことで、めちゃめちゃインパクトのあるフロントまわりとなっています。このごっついフロントセクションとバランスを取るために延長されたストレッチボディーが採用され、合わせてシートも専用のロングタイプとなっているんです。なのでデザイン面にも相当力が入れられたモデルだったワケですね。

ショートスクリーン

角形ヘッドライトも印象的ですが、まるでスポイラーのようなショートスクリーンも目を惹きますね。80年代当時のバイクに流行した、ビキニカウル(小型のヘッドライトカウル)を意識したデザインというのがスポーティ感を強調してくれるようです

PX125T5の独特なシート後端が分かる

手前がPX125 T5で、奥が通常モデルです。延長され、デザイン的な変化を確認するため並べてみたんですけど、PX125 T5の独特なシート後端からリヤバンパーまで斜めにスパンと切り落としたようなスラントラインがベスパらしからぬ斬新さです

リアが延長されているのが分かる

やはり手前がPX125 T5で、奥が通常モデルです。シートを開けてみれば、延長された長さの違いがハッキリ確認できます。黒のガソリンタンク後端の平坦な部分の長さがまったく違いますし、リヤエンドの角度や形状もまったく別モノですからね

フロントフェンダー

今度は右がPX125 T5で、左が通常モデルです。フロントフェンダー自体の高さ(深さ)を抑えて薄く仕上げられた1枚プレスで作られたフロントフェンダーを採用し、低くデザインされたホーンカバーによりスポーティムードも向上しています

PX125T5アンダースポイラー

ブラックのアンダースポイラーがスポーツバージョンとしてのイメージ作りに貢献しています。ヘッドライトまわりが大きくなり、ストレッチボディーで長さも増しているため、フロア下のアンダースポイラーが引き締め効果として重要な役割を担っています

PX125 T5には小物入れが付いている

レッグシールド内側にキー付きフロントボックスがあるのは通常モデルと共通ですが、PX125 T5ではその上部にかんたんな物置として使えるトレーを標準で装備しています。しかもサブネームの「POLE POSITION」ステッカーが主張していて◎

Vespa初のデジタルタコメーター

80年代当時は近未来的とされたパネルデザインを採用し、液晶表示部にはベスパで初採用となったデジタル式タコメーターも組み込まれました。回転数が数字で表示されるだけのシンプルなものですが、スポーティームードは格段に高められました

異例のプロモーション

  ボディデザイン、搭載エンジン、専用キャブレター……すべてがスペシャルなPX125 T5ですが、このスペシャル尽くしのスポーツバージョン・モデルのプロモーションがまた異例の注力っぷりでした。なんとイメージキャラクターに起用されたのが、80年代当時のトップF1ドライバーだったネルソン・ピケ(画像提供:成川商会)だったのです! そんなネルソン・ピケを起用したことは、レーシーなイメージ付けのため最良のキャラクター性だと判断されたのでしょう。やはりスポーツバージョン・モデルともなればレーシングな印象は欠かせないものですからね。じっさいPX125 T5のサブネームである「POLE POSITION」もネルソン・ピケの定位置として認知されやすかったでしょうし、PX125 T5の速さを象徴するのに最適だったんだということではないでしょうか。

いよいよインプレをお届け!

  さてさて今回も運良く試乗することができましたので、滅多にお目にかかることのないヒストリック・ベスパのインプレッションを今回もお届けしましょう。しかも今回はMuseo Vespa Giapponeとオーナーさん1名のご好意で、本家T5を含む関連4モデルを一挙にインプレしちゃいました!
  カタログ発表値では0〜100mを8.09秒、0〜400mでは20.6秒という加速性能を示し、最高速は110km/hに達する高性能モデル(1985年当時)です。その本家PX125 T5の走りも楽しみですし、関連モデルの乗り味にも興味津々です!!

ショートインプレッション@PX125 T5

  良くも悪くも80年代テイストあふれる2stバイク的な味わいがあります。下がまったくなく、パワーバンドに入ったとたん驚異のダッシュをみせ、気を引き締めてかからないと真面目にヤバイほどのパンチ感が持ち味といったところです。その鋭く"刺す"ような加速性は、とても125ccとは思えないほど強烈です。ただしパワーバンドに届くまではじれったいほどのもたつきなので、パワーバンドを外さないように乗れることがPX125 T5を楽しむための条件になりますね。逆に言うと、パワーバンドをキープして走らせるライディングスキルを持ちあわせていなければ、PX125 T5の"楽しさ"や"らしさ"をけっして味わうことができないということになってしまいます。そこがじつにおもしろく、そしてむずかしく、いろいろな意味で唯一孤高のスポーツモデルだったんだろうなという気がしました。いわゆる後継機種が登場しなかったワケですからね。こうした小排気量車をブン回すおもしろさはイタリア車に多く見られる傾向で、全開域を楽しみながら性能をフルに使い切るというところがイタリアンたちの走りの方程式と言えそうです。なので本来は女性にも扱いやすい乗りものというコンセプトのベスパでさえも、スポーツバージョンをラインナップして走りも楽しんでしまおうというちょっと異色なポジションのPX125 T5。そんなところがベスパならではのバリエーション構成の厚みやおもしろさであり、人気の秘密なのかもしれないですね。

ショートインプレッション@台湾Vespa PX150E T5

  じつによく走るし、本当に速いと感じたのが台湾Vespa PX150E T5です。それにパッと見の外観は本家と見分けがつき難いほどそっくりです。じつは本家より大きな150ccという排気量のために単純比較はできませんが、よく整備されていたということもあって目からウロコ級の驚きがありました。150ccという余裕のキャパがもたらすトルクの太さが低速から十分に感じられるし、ストレスなく回転が上昇していくエンジンなのでパワーカーブは綺麗な放物線を想像させてくれます。そして回すほどパワー&車速が増していくところが好感触だったりもします。本家で感じた鋭い加速感がない代わりに全域でトルクフルな加速を楽しめるし、かなり俊足な部類だと言えるんじゃないでしょうか。イージーに楽しめ、それでいて速いワケですから狙い目な反面、維持の面では部品調達などで苦労することが予想されます。なにしろ今は存在しないメーカーですから。

ショートインプレッション@LML-Vespa T5

  ひとめでわかるT5ルックですけど、細部に目を向けると形状やサイズなどが本家T5とは異なる仕様となっています。それになにより搭載されるエンジンが100ccの3ポートなので、非力さを否めないというのが正直なところだったりしますね。全体的に小さな車体サイズなんですが、やはり100ccでは過度の期待は禁物です。それでも小ぶりなボディを一生懸命加速させ、がんばってる感たっぷりなところは◎だと感じました。それに100ccと割り切ってしまえばよく走る部類とも言えますし、回転フィールとエンジンのがんばってる感だけなら“小気味いい"という表現でいいんじゃないでしょうか。ただし実速はやはり排気量相当だったりしますから、125ccモデルと同等の走りは期待しないほうがいいです。それでも近場の足として使うというような用途で上手につきあえば、これはこれでなかなか楽しい乗りものなんじゃないかと思います。

ショートインプレッション@Vespa PX125 T5 CLASSIC

  PX125 T5 CLASSICとは通常モデルにPX125 T5用のスペシャルエンジンを搭載し、細かな部分にPX125 T5用専用パーツをインストールした変わり種モデルです。まさに「羊の皮を被った狼」という表現がピッタリで、PXとほぼ同様のルックスながらアンダースポイラーなど、「おや?」と思わせる装備が施されています。そしてこのPX125 T5 CLASSICが非常にいいコンディションの個体だったため、T5エンジンへの印象がガラリと変わるほど別の意味でインパクトがありました。以前試乗した本家PX125 T5とは異なる印象で、よく整備されたT5エンジンは高回転まで胸のすく上昇感とともに、パワーバンドに入ってからの劇的な加速フィールを存分に楽しめ、かつ下側も犠牲になどしていないということが確認できました。少し回し気味に乗ってやるだけでパワーバンドの手前でもそれなりに走らせられ、もちろんそれより上の回転域で楽しめる刺すような加速も存分に満喫できました。

今回はこれで終了!

さて「ヒストリックモデル#02」はいかがでしたか?
取材条件が整えば、第3回いついても記事化していきたいところですが、そこが難しいところでもあります。
それにオーナーさんのご好意に頼らざるを得ないため、必ずインプレッションまで実現できるというものでもありません。
それでも魅力あるヒストリックモデルの取材を計画していきますので、次回もぜひぜひ楽しみにしていてくださいね〜!!

それでは次回をお楽しみに!