前回久しぶりにお届けした「旧車レストア編」ですが、今回も引き続きお届けしちゃいます。予告でお伝えした通り、ハンサム自動車工場さんが実際にどうやって調色していくのかだったり、ハンサム自動車工場×ムゼオによる塗装をテーマとした対談などが今回のメニューになります。日ごろなかなか目にする機会のない調色など、興味深く見てもらえるんじゃないでしょうか。
それでは「旧車レストア編・第11話」、始まります!

この記事をシェアする!

  ようやく塗装の打合せが出来たという段階なので、「旧車レストア編」自体はまだまだこれからというところ。これまでに手配してきたパーツ類もかなり集まって来ているようですし、今後どんなカラーに仕上げられていくのか、その上でパーツ類が装着されていくようすも楽しみで仕方ありませんね

まずは前回のおさらいから

  前回がずいぶん久しぶりの公開となってしまった「旧車レストア編」ですが、今回はその後編となります。まずは前回のおさらいからいってみましょうか。
  まずレストアとは拘れば拘るほど"時間観念がズレる"ものであり、"どこまで拘るのか"を自分の出来るレベルで決めて取りかかる必要があるというところに触れています。もちろん時間観念のズレが社会生活に支障をきたすワケではありませんが、レストアに関する事柄に関しては時間進行がゆったりと流れるものなんです。やはり思うように進まないと飽きてしまったり、面倒で嫌になったりしてしまいがち。だからムリのないレベルでレストアを楽しんでもらいたいという事なんです。
  それから"塗装に関する打ち合わせ"についても触れています。レストアにおける塗装とは、どうしても特殊なオーダーになりがちです。だからこそ塗装屋さんに正しく理解してもらって気持ちよく作業してもらい、満足出来る仕上がりが得られるように打合せがマストとなるんです。
  続いて調色についても触れています。古い車両を塗装するとなると退色など、メーカー指定色のままでは見た目的に違って見えてしまうことが多いもの。そんな理由もあって調色は欠かせないワケです。最近では測色機を使って調色出来ることにも触れていますが、最終的な微調色は昔ながらの調色作業が必要となります。そのため知識と経験が物を言う事になるようです。
  またレストアではほぼ確実に板金作業が必要となります。ところが現代的なテクニック(アッセンブリー交換や表側だけパテ処理するという方法など)だけでは完璧なものとはならないため、ここでも以前の技術が必要不可欠だったりするそうです。

測色機は塗料メーカーによって異なるタイプが存在するが、基本的には計測して色のデータを分析するというもの。取材でおじゃましたハンサム自動車工場ではスタンドックスの塗料を使い、測色機もスタンドックスのものを使用していた。また実際の測色は平面で行うため、部品であっても測色出来るだけの平面があれば良いらしい(写真左)。試しに計測したのは色見本のサンプルシートで、測色後はパソコンのモニターに"求める調色"に必要な色の種類と量が表示されるというもの(写真右

狙う仕上がりイメージにどれだけ近づける事が出来るか

  ここからはハンサム自動車工場とムゼオによる「レストアにおける塗装の難しさ」をテーマとした対談の内容をお届けしようと思います。

  ムゼオ■レストアに取り組もうと考えた時、多くの人が不安に思うのは「どこを塗って、どこを残すのか、元はどうなっているのかというところがわからない」ということなんですよね。あとベスパを知らない人(塗装屋さん)に何も言わないでオーダーすると、鉄板の合わせ目等の段差もパテで埋めてスムージングされてしまうことがあるので要注意だと思います。

  ハンサム■「気になるところはパテ入れて」なんて言っちゃうと、スムージング処理で完璧に仕上げちゃうのがフツウでしょう。塗装屋にしてみれば「なんの問題があるの?」という反応が当たり前。ベスパだと塗り残しまで再現したいとかっていうのを知らないのだから、当然そうなるワケですよ。

  ムゼオ■リプロパーツなどは、合わせ面の処理の甘さなんかをそのままにされてしまう。なんにしろ過去にいろいろ見比べて、ベスパがどうなっているかを知っていないとどうやればいいかわからない。これは仕方ない事です。だからオーダーする方としてはベスパの経験があったり、これまでやってきている塗装屋さんに出したいと考えるんです。もしもやった事がないところに依頼するなら説明は不可欠で、それを事細かに説明していくと塗装屋さんは面倒でやりたくなくなってしまう。

  ハンサム■ベスパには裏と表があって、分かる人分からない人で仕上がりも違ってしまう。だから知らなくてもそういうところまで細かくオーダーしなければ、思い通りの仕上がりを期待できないというのもありますよね。

  ムゼオ■そういう意味で、ある程度の心構えを持ってからオーダーしに行ってほしいんですよ。そうなれば当然そのために勉強しないといけない。自分が知らなければ細かなリクエストなんか出来ませんしね。仮に勉強しない(したくない)と言うなら、しないなりにやってみて失敗しながら経験を重ねていくしかないってことになります。

  ハンサム■1つずつ例を上げていくのも手でしょうね。例えばボディの凹みにパテを盛って均して仕上げられても、裏側から見るとボコボコでダメ。それが裏と表があるということなんだとか。それにプレスラインの埋まっちゃいけないところが埋められてしまう事については、「埋めても問題ないけど、本来は埋めないところなんですよ」というのを実例でいくつか出していくべき。

  ムゼオ■そうやって1つ1つ説明していくのは大変だけど、その通りにやらされる塗装屋さんも大変。だから結果的にベスパのレストアや塗装に関する経験があって、理解しているところに出した方が良いという事になってしまうんですよ。それと直接塗装屋さんに持っていくよりはリスクが少ない方法として、ベスパ屋さんにお任せするというのも1つの方法ですよね。そうすれば細かな説明などは自分でやる必要がなくなるので、苦労もないのだからオススメではあります。

  ハンサム■そもそもレストアであるから細かなオーダーを必要とするワケじゃないですか。復元とか補修のための作業なので、元の状態を知らないとちゃんと正しく直せないでしょという話。別にカスタムならスムージングなどもアリな手法だし、調色だって好みのカラーでやってもらっていいんですから。

  ムゼオ■一般的には、「キレイならいい」って感じでざっくりしてる人が多い印象。調子よくて見た目がオリジナルっぽいなら問題ないし、そもそもオリジナルを見ることがないのが通常なので"当時っぽく仕上げる"という表現があってるかも。

  ハンサム■でも、そういうのも乗るっていう意味では良いと思う。ツヤの具合にまで拘っちゃったら、もうたぶん塗れないでしょう。行き着くところは「じゃあ自分でやりなよ」という話になってしまうので、今ある材料でベストを尽くすっていう方が一番良いんじゃないかなって思うな。

  ムゼオ■たしかに実際問題として塗料やその他色々と突き詰めたレストアって難しい話だったりするけど、どれだけそこに近づけるかっていう努力をする……そこがレストアの醍醐味であり、1つの楽しみであるという事は理解しておいてもらいたいですね。今回この企画ではVNB2を可能な限り"自然な雰囲気"に仕上げていこうと考えています。なので正に"どれだけそこに近づけるか"という事は常に考えながら進めているので今回は可能な限り拘ってみたいです。

ベスパってそのままでは見えない部分がどうなっているのかを知っていないと、復元や補修を正しく行うことが出来ません。例えばサイドパネルの裏側(写真左)、ボディ内に収納され見えなくなってしまうガソリンタンクの側面(写真中)などは、知らなければまさか下地のままだと思いもしないでしょう。またキャブレター室のフタを開けた奥の壁面には塗りムラがあって(写真右)、このようにしたいというオーダーがなければ間違いなく全面ボディ同色で塗られてしまうハズです

凹み補修に関しては、参考としてフライホイールカバーで見てみましょう。表面の凹み(写真左)が裏面では凸状(写真中)となり、表面だけパテで成形しても裏面には出っ張り部分が残ってしまうワケです。そのためある程度叩いて修正し(写真右)、その上で表面も裏面もパテ成形でキレイに均して仕上げる必要があるんです