久々更新となるヒストリックモデルですが、第8回は多様なシリーズ構成で展開されたPKシリーズをご紹介してみようと思います。
まずは第1弾として1stGENERATIONモデルから。なんと共通のルックスでありながら異なる駆動方式が設定とされていたため、代表格としてPK50SSとPK80S automaticaの2機種を軸としながら掘り下げて行くことにしましょう!

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新世代スモール・PKの基本形/PK50SS

ニューラインの流れを汲んだ、ピアッジオの力作スモール

  PKシリーズが登場したのは1982年のことです。ちょうど2輪における変革期だった時期でもあり、デザイン、エンジン構造、性能、機能性などが一気にステップアップしていった時代でもあります。この大きな変革の渦の中で試行錯誤が繰り返され、ベスパも確実に進化を遂げていったように思います。

  新世代スモールのベーシックラインを担うPK50SS(写真上)と元祖スモールのハイエンドラインを担う125プリマベーラ(写真下)。見比べてみるとPK50SSの方が角ばっていて、P/PX系の流れをくんでいることがわかるでしょう。またバーエンドだけだったウインカー(写真下)は前後に配置され、被視認性を高めています

  扱いやすいサイズの小ぶりなボディに手ごろなパワーが与えられていたスモールシリーズは、キュートなルックスと使い勝手の良さから世界中で人気を博していました。しかし80年代に入って時代の求めるニーズは多様化していき、それに対応できるモデルの必要性からピアッジオ首脳陣は新たなベースラインモデルを模索していたのだと推測します。

  基本的にスモールシリーズは排気量のバリエーションだけで展開されていましたが、時代の求めるニーズは多様化され、もはや排気量だけで対応できる状態ではなかったのでしょう。もしかしたら80年代になって始まった日本メーカーのスクーター生産本格参入も、ピアッジオ首脳陣を奮い立たせた要因だったのかもしれません。

  まあともかく、このことに対するピアッジオ首脳陣の回答は異なる駆動方式を用いたバリエーションの充実化でした。それはベスパとして量産モデルへのAT(オートマチック)ユニット搭載という初の試みでもあったんです。もちろんベスパらしさを象徴するハンドチェンジモデルもラインナップされ、排気量の違いも合わせた多様なバリエーション展開で構成されていました。

  そもそもPKシリーズがデビューしたのは1982年のことです。その5年前の1977年にはラージシリーズとして、その後ロングセールスを記録していくP/PXシリーズがデビューしています。このP/PXは、やがてやってくる80年代を先取りしたかのような角ばったデザインを採用していたのが外観上の大きな特徴でした。実はPがデビューした当初、日本国内での評価は芳しいものではありませんでした。しかし新たなラージシリーズであるP/PXをニューラインと呼び、世界的には好評をもって迎えられ着実にセールスを伸ばしていくことに成功しています。

  そうして世界中で認知されたPの人気にあやかるかのように、PKシリーズには角張った雰囲気のデザインが採用されていました。さらに前後ウインカー、全機種ではないですが分離給油化やセルスターターの装備など、競争力を高める戦略が取られていたこともポイントです。こうした装備面の充実は、安心・安全・便利といったキーワードが重要視された結果でしょう。

  このようにPKシリーズは売れている上級モデルのイメージをダブらせる手法が採用され、アッパークラスとなるPの持つグレード感を巧みに取り入れていたと言えます。しかしピアッジオ首脳陣はこれでよしとはせずに、さらなるハイライトを用意していたんです。それは50㏄モデルには未搭載ながら、80/125㏄モデルに対して格段に進化したフロントサスペンションを搭載したことです。恐らくグレード感の向上で乗り替えたユーザーに対し、操作しやすく快適な乗り心地も同時に提供しようという戦略で市場にアピールしたワケです。

アッパークラスのPとはどんなモデル?

P125X

来るべき新時代に照準を合わせたデザインをまとい、1977年にデビューしたのがラージ系Pシリーズです。写真はP125Xですが、共通ボディに排気量の異なる3バリエーション(200cc、150cc、125cc)で構成されていました。そろそろデビューから40年になるというのに、さほど古さを感じさせないデザインは秀逸だと言って良いでしょう

  ベスパ史上、いろいろな意味で重要だったと解釈できる機種がいくつか存在します。その中にどうしても加えるべき1台として挙げておきたいのがPだと言えます。 Pのエポックメーキングかつ歴史的重要性は「足回りが劇的に良くなった」ことに尽きます。そこまで(70年代後半くらいまで)に進化を重ねて完成型だと思えた足まわりも、現代の水準で考えるともの足りなさがあるのは否めません。そのことは125クラスならまだ良かったとも言えますが、200クラスの走りでは正直厳しいなと思うことが多々あったりしました。しかしそれを改良していった結果、とうとう現代レベルの足まわりにまで発展させることに成功したんだと考えられます。

  もちろん長い歴史の中でちょっとずつ変化しながら良くなってきたワケですから、ここまではダメでここからが良いと言えるものでもありません。それでもガツンと目からうろこ級に良くなったと思えるのは、70年代後半のP(ラージシリーズ)からだと思えてなりません。ちなみにPKシリーズの足回りもなかなかのものだったりします。

  なおPの良さとは足回りに限った話ではありません。どこか一箇所だけが良くなったとういうのではなく、トータルで良くなっていたんです。足回りの劇的向上は"走り"そのものをグレードアップさせ、それに合わせてブレーキの効きも良くなっています。さらに電装の12V化を実現し、灯火類も格段に明るくなっていました。

  また分離給油採用モデルをラインナップしていることもあって、快適さという意味ではかなり現代的になったと言えるでしょう。当初は2stオイル供給面でのトラブルもあったと聞きますが、ピアッジオの取り組みとしては将来へのチャレンジという意味もあったハズです。なによりシリーズ後継機種のPXにまで分離給油システムは受け継がれていくのですから、大きなくくりで悪いものではなかったと判断できるものだと言えます。

P/PX系の方程式でルックスを固めた新生スタンダードモデル

PK50SS
  実はビンテージシリーズとして日本国内で展開された、それまでのスモールとサイズ感は変わらなかったりします。ところがP/PX系とイメージがダブることから、なんとなく大柄な印象を受けるエクステリアデザインがPK50SSのポイントです。

  外観上の特徴は、なんといっても先にデビューしていた“P"のイメージであることでしょう。それまでのスモールシリーズと同等のサイジングでありながら、少し大きなイメージを持たれるんじゃないかと思います。この“P"とよく似たちょっと先の未来をイメージさせる角のあるデザインは大柄な印象とともに、ラージシリーズの雰囲気にあやかったゴージャスさやデラックス感も強張することに成功しています。フロントボックスやリヤバンパーといった装備も標準で装着していたこと、さらには前後ウインカーまで備えていたことで、よりいっそうデラックス感は強まっていたんじゃないでしょうか。

【主要諸元】
 Vespa PK50SS

製造年1983〜1987年
フレーム形式スチールモノコック
全長×全幅×全高1,675mm×700mm×1,070mm
ホイールベース1,175mm
最低地上高252mm
車両重量77kg(乾燥)
燃料タンク容量6.2L
最高速度60km/h
エンジン型式・種類強制空冷式2ストローク単気筒
総排気量49.77cm3(cc)
内径×行程38.4mm×43mm
圧縮比9.1:1
最高出力ーーkW[ーーPS]/ーーrpm
燃料供給装置型式Dell'Orto・SHB16/10(キャブレター)
始動方式キック
2stオイル混合比2%
クラッチ形式湿式多板
変速機型式常時噛合4速ハンドチェンジ式
ギヤレシオ1速26.68:1/2速17.74:1
3速12.78:1/4速9.62:1
タイヤサイズ(F/R)3.00×10"/3.00×10"