BBB MAGAZINE

  • MotorCycleDays

    2015.07.13 / Vol.23

    - page2 - バイク旅行家の本棚②

CREDIT

    • ライター
    • 執筆

    藤原かんいち

    • 撮影

    藤原かんいち

    • バイク

    リトルカブ

自宅マンションの前を出発

8月22日、千葉県市川市の自宅を出発。まずは日本海へ向かった。初日から雨に降られるハプニング、夕方にキャンプ場を見つけたが一泊3000円、2日分の生活費という金額に愕然。結局、公園の東屋のベンチで寝ることになった。翌朝、人の気配で目を覚ますと、中年のおじさんが僕の眠っているベンチに乗って東屋の屋根裏をガサコソしていた。聞くとそこにお酒を隠しているのだという。聞くとホームレスの人らしく、いつもこの辺りで野宿をしていて、野宿にいい場所をいくつか教えてくれた。その後、この旅初めての入浴。越後湯沢温泉の共同浴場「江神温泉浴場」200円に入浴。昼間の温泉は誰もいなくて独り占め、最高の贅沢を味わった。 そのまま日本海を北上。海水浴場で初めて北海道帰りの旅人ライダーと遭遇。聞くと北海道へ渡るときが大変だったらしく、青森へ行ったが北海道へ渡るフェリーが2日間満員で乗れず、仕方なく大間港まで走ったがこちらも満員。結局、さらに走って大畑港(現在はフェリー廃止)まで行きやっと北海道行きのフェリーに乗れたというからビックリ。まさか、北海道へ渡るライダーがそんなにたくさんいるとは想像もしていなかった。この旅をしたのは1995年、その頃は北海道へ渡るというライダーも多かったのだろう。今はライダーも減りそんなことはなくなったはず、こんなところに時代の流れを感じる。

北海道の羊蹄山とスーパーカブ
川北温泉の露天風呂

原チャリ野郎のハラペコ日本一周(裏表紙)

秋田県では男鹿半島の入道崎に立ち寄った。灯台を下から眺めた後、駐車場で東北地方をツーリング中のライダーと仲良くなり、缶コーヒーを御馳走になる。つい先日まで普通に飲んでいた110円(当時は消費税が3%)の缶コーヒーが遠い存在になっていたのでこれには大感動。たかが缶コーヒーにこれほど感激するとは夢にも思わなかった、これもビンボー旅のお蔭だ。

青森県に入ると広大なスイカ畑を発見。しばらく走ると無料販売所があり、何と100円でスイカを売っていた。大きくておいしそう。そして何より安い!! これは絶対に買いだと思い、どれにするか迷っているところに車が一台。おじさんが下りてくると試食だー!といいながらスイカを叩き割った。むしゃむしゃ食べながら、「おめえも食うが?」と言ってスイカを渡される。「ありがとうございます、いただきます!!」まさかの展開となった。

そして青森からフェリーで函館へ。函館では古い友人の家へ転がり込んだ。この旅で初めての布団、お母さんが用意してくれた夕食、刺身や焼き魚など北海道の海の幸をお腹いっぱいいただいた。

最東端の納沙布岬にて

函館から北海道一周の旅が始まる。10年ぶりの日本の旅、そして北海道の旅では、公衆トイレがきれいになったことに驚いた。昔の公衆トイレと言えば落書きの壁に壊れたドア、クソまみれの便器が定番だったのが、水洗トイレにトイレットペーパーが当たり前の時代になっていた。この旅からさらに20年後の今。当時はなかった「道の駅」が全国にでき、コンビニも圧倒的に増えて、24時間いつでも食べ物が手に入るようになった。こんなところにも20年の流れを大きく感じた。その後、少し面白いエピソードが出てくる。浜益海岸で原付バイクで北海道ツーリング中の50代男性と出会う。話をすると家族から「いい歳なんだからやめなさい」と言われながらも「一回でいいからバイクで北海道を走ってみたい!」と思い、意を決して長崎から出てきたという。この時僕は34歳。50歳を過ぎたらみんなもうバイクには乗らなくなるのか、そういうものなのかな...と思いながら話を聞いていた記憶がある。今自分自身が50代になってみると、まだまだいろんなことができるので、この言葉には違和感を感じた。その年になってみないとわからないことがたくさんあるようだ。

羅臼のキャンプ場に鹿が現れた
早朝の駐車場で朝ごはん

10年ぶりの日本最北端の宗谷岬に到着。三角の碑はあの頃のままだが、周辺は大きく変化していた。大型駐車場ができて、きれいな公衆トイレも作られていた。旅をしていると変わるもの変わらないものがあることに気が付く。 宗谷岬到着の後、僕はこんなことを書いている「旅はいつまで続けても限りがないし、終わりがないような気がする。まるで結末が知りたくてページを捲っているのに結末に辿り着かない小説を読んでいるようだ...」確かにその通りで、いま改めて、旅は人生そのもののような気がしている。

四国の山道を行く

その後カラスに食料を奪われ、露天風呂で露出狂男に遭い、オウム教徒に間違えられ職務質問を受け、海外で出会った旅人と8年ぶりの再会、ムカデに噛まれて病院へ行き、銀行のキャッシュカードを落とし慌てふためき、4時間かけてパンク修理、雪の峠越えなど様々な出来事を乗り越えながら旅は続いて行く。これ以上書くと全部になってしまうので、旅のエピソードはこの辺までにしておく。
この本では全ページに走ったルートを自筆のイラストマップで紹介。誌面を明るくしている。さらに毎日の食事内容と家計簿も自筆文字で紹介している。

ちなみに10月16日50日目は

献立
■朝食:ナポリタンスパゲティ(前日の残り)
■昼食:蒸しパン、コーヒー牛乳
■夕食:ごはん、みそ汁

家計簿
■ガソリン代(3.5リットル):431円
■食パン(一斤):170円
■蒸しパン:100円
■コーヒー牛乳(1リットル):110円
■玉子(10個パック):178円
■チキンライスの素:125円
■ハンバーグ:158円
■シーチキン缶詰:100円
■入浴料:150円
■(外)消費税:28円
◎合計1,550円

という感じ。これを見ると何を食べていたか、当時の物価などもわかるので面白い。

そして旅日記の最後のページにはと旅で使ったお金の内訳を全公開。ガソリン代、食費、宿泊費、入浴費、フェリー代、有料道路通行料、雑費その他、消費税の総額が書かれている。ちなみにガソリン代は24,991円だった。

さらに巻末では日本一周ラーダ―ズバイブルとして旅の体験を元に、日本一周を実現するためのノウハウを紹介。計画編(資金、期間、時期、ルート)、準備編(バイク、お金、地図、工具、スペアパーツ、ウエア、キャンプ用品、カメラ、そのほか、パッキング)、実践編(走る、食べる、眠る、楽しむ)と分けてアドバイスしている。さらに装備品一覧を直筆イラストで紹介。

日本本土最西端の長崎県の神崎鼻
10九州最南端の佐多岬ロードパーク.jpg
まさかの雪に見舞われた安房峠

20年も前に書いた本なので現実的には参考にならないところもあるのだが、逆に20年前といまとのギャップに驚くことができる。また出会いや風景などは昔も今も変わらないもの。同じことでも同年代の人は懐かしく、若い世代には驚きだったりするので、いろんな世代でいろんな読み方ができると思う。 最後に自分で書いた本を読みながら「いま日本で10万円で日本一周ができるか?」考えてみた。ガソリン代や食費など物価は2割増しになっているが、ギリギリできそうだ。いまのリトルカブならリッター75kmは走るからね。ぜひ、誰か挑戦して欲しいです。

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