BBB MAGAZINE

  • 藤原かんいち電動バイク世界一周

    2007.11.01 / Vol.16

    電動バイク世界一周の旅『 オレンジロードを行く 』

CREDIT

VOL.16 『 オレンジロードを行く 』[ヨーロッパ大陸編]

藤原かんいちの冒険ツーリング

オレンジロードを行く

バルセロナの市場
バルセロナの市場は新鮮なフルーツ、野菜、魚介類、ミートがたくさん。値段も安く僕たちは大好物のチェリーを手が赤くなるほど食べた

僕たちはロルカを出るとバルセロナへ向かって地中海沿いを北上した。

このあたりバレンシア地方は、日本でも有名な世界有数のオレンジの産地。見渡す限りオレンジ畑が続いているが、時期外れらしく実をほとんど付けていないのが残念。おそらく時期になったら柑橘系のいい匂いが香る、すてきなオレンジロードになるのだろう。

少しずつ町と町の間隔が狭くなり、交通量も多くなってくる。通過する町は地図では小さく載っているのに、実際はとても巨大で10階建て以上のビル(コンドミニアム?)がズラッと並んでいたりする。それも何もない平原にいきなり大都会が現れるから驚く。

そして平日なのに、なぜかビーチも町中も人が溢れかえっている。このあたりは気候が温暖なので、寒い国のヨーロッパ人が集まってくるのだろう。キャンプ場も満員で泊まれなかったり...スペインはどこも人が多いのが、なんだかとても意外だった。

バーで乾杯

バルセロナで感激
バルセロナにある「カサ・ミラ」もアントニ・ガウディの作品。徹底的に直線を排除したデザインがなんともガウディらしい

海岸のキャンプ場に入るとその大きさと施設に思わず目が点になった。何とサイトは400区画、そして敷地内にスーパーマーケット、レストラン、土産物屋、インターネット、バー、さらに床屋まであるではないか。これだけ設備が充実しているなら、ここに住めるぞ。
しかしヒロコのお気に入りはBAR。スペインのキャンプ場には必ず、カウンターとテーブルのあるバーがあり気楽にお酒が飲めるのだ。ここはお酒がズラッと並んだ大きなカウンターがあり、さらに生ビールまである。それがコーラより安く、1.2ユーロ(約150円)なのだから、ビール好きには天国のような場所なのだ。

テントを張り、食事を済ませると「さあビールだ、ビールだ」とバーへ一直線、ヒロコは生ビールをおいしそうにグビリッ。 下戸の僕も負けずにコーラをゴクリ。
「キャンプ場で生ビール、たまんないねぇ~」
「ホント一日走ったあとのコーラ、生きてるんだぞ~って感じがするね!」
「コーラなのに? あはははは...」
実に幸せな、ふたりなのであった。

バルセロナで感激

「サクラダ・ファミリア聖堂」
これがガウディのライフワークでもあった「サクラダ・ファミリア聖堂」。中央には160mもある巨大な塔が立つ予定。生きている間に見られるか?

僕たちはバルセロナでヨーロッパ横断へ向けたバイクの点検と整備をお願いするため、事前にバルセロナにあるヤマハ・モーター・スペインと連絡を取り合っていた。

当日、整備をしてくれるヤマハ・モーター・センターに行くと、僕たちの到着に合わせてヤマハ・モーター・スペインの皆さんがわざわざ集まってくれ、出迎えてくれたのでビックリ。さらに店の入口を見ると、僕たちの名前が書かれた垂幕まであるではないか! 感謝、感激。いや、それ以上、もう大感動だった。

バイクを預けて僕たちはバルセロナを歩きまわった。中でもガウディの「サクラダ・ファミリア」は凄かった。ヨーロッパでは何千年何百年も昔に造られた、古いものばかり見てきたが、これだけは現在進行形。あちらこちらが工事中、中央部はまだ天井もできていない状態だが、逆にそれが歴史が作られて行く過程の時間を共有できたようで嬉しかった。

ピレネー山脈を越えて

フランスとの国境
フランスとの国境が近づいてくると、周りの風景も徐々に変わり始め、険しく切り立った岩山が目立つようになる

バルセロナでバイクをリフレッシュした僕たちは、ピレネー山脈へハンドルを向けた。パッソルにとってはヨーロッパ最初の難関だ。山を越える途中、山中にある人口6万5千人の小さな国「アンドラ」に立ち寄ることにする。

この国は免税のため、スペイン・フランス両国から多くの買い物客がやってくる。あちらこちらに大型のショッピングセンターがあり、ホテルが立ち並んでいてとても賑やか。国全体がショッピングセンターのような珍しい国だ。おかげで買い物を終えて自国へ帰る車が、国境で長蛇の列を作っていた。

余計な荷物を積むスペースが全く残されていない僕たちは買い物もせず、食料だけを胃袋に詰め込むだけですぐにフランスを目指した。


カテドラルが立っている
フランスの町の中心には必ずカテドラルが立っている。街中はスペインに比べるとわかりやすく出来ている

冷たい風と雨が降る中、登り続けること数時間、ようやく2407mの峠に到着。やったーっ! ついに僕たちはピレネー山脈を越え果たした。

6月13日。フランスに入って一転、なんだかやけに町の造りがこぎれいになった。また走っている車もシルバーやブラックなどダークな色ばかり。スペインは赤とか明るい色が多かったのにずいぶんシックだ。

町を歩いている人はパッソルをかなり興味深そうに見ている、それもかなりの数だ。だがあまり話しかけてこないのは英語が苦手だからだろうか? しかし、歩いている人が振り返る率は、もしかしたらフランスがナンバー1かも。

一難去ってまた一難

ユースホステル
ヨーロッパで僕たちがよく泊まっているのがユースホステル。基本的には相部屋でこんな風にベッドがいくつも並んでいる

バッテリー残量ギリギリでブルガという町に到着した。しかしキャンプ場へ行くとまだ6時なのにもう受付が閉まっている。さあ、どうしよう!?

仕方なく他のホテルを探すが、安ホテルが見当たらない。ならば、テントを勝手に張ちゃって明日出るときに払えばいいか...と考え直し、再びキャンプ場へ引き返す。ところが電源の差込が特別な形をしていて、充電器が差し込めないではないか。あちゃーっ、これじゃ充電ができないぞ。うぇ、まいった。荷物をまとめて再び町に出る。

ウロウロ探すがバッテリーの残量が減る一方。街中は狭く敷地に駐車場のあるホテルがなかなか見つからない。ようやくガレージのあるホテルを発見、値段も何とか泊まれそうだ。ほっとしたついでに夕食を手に入れておこうと思い、ピザを買ってからそのホテルに行くと、満室で泊まれないと断られてしまった。ガーン!一難去ってまた一難とはこのことだ。近くのホテルの場所を聞き、行って見ると何とここも満室。信じられない、何で? 観光地でもないのに、うそだろーっ。


モンサンミッシェル
モンサンミッシェルは特にヒロコがいつか行ってみたいと憧れていた場所。天気もよく最高の日だった

困り果てていると受付の人が見かねて知っているホテルに電話を入れてくれた。するとそこは部屋が空いているという。よかった。ところが詳しく場所を聞くと3kmもあるではないか...。こりゃ、参った。バッテリー残量の目盛りは後ひとつ。いけるだろうか、いや、行くしかない。祈るような気持ちで続ける。そしてついに、いつ止まってもおかしくない状況なった。

「ううーっ、頼む、バッテリー何とかホテルまでもってくれ!」
叫んでいるところで、何とかホテルに到着。やった。何とかたどり着いた。僕は疲れと安堵感でその場に倒れそうになった。時計を見るともう10時半、なんとも疲れた一日だった。

憧れのモンサンミッシェル

「エッフェル塔」
ヤホーッ! ついにパリに到着。嬉しさのあまり喜びまわるふたり。正真正銘「エッフェル塔」だ!!

「あれじゃない!?」
「アーッホントだ!」
ついに海に突き出すように聳え立つ、モンサンミッシェルが見えてきた。遠くから見ると修道院というよりも、お城のようにも見える。とにかく幻想的な風景だ。

バイクを置いて入ると小さな路の両側にレストランとお土産屋がビッシリ並んでいた。まるで日本の観光地だ。さらに観光客も多く、年末のアメ横並にごった返しているではないか。モンサンミッシェルを造った人は、まさかここが将来こんなことになろうとは...夢にも思わなかっただろう。

実際に建物の中を歩いてみると、修道院の後、一時は監獄にも使われていたというモンサンミッシェル。その建築物もなかなか見ごたえのあるものだった。
そして夜。もしかしてライトアップされた夜景はかなりきれいなんじゃないかと思い、10時過ぎにもう一度訪ねてみると、これが予想以上の美しさだった。まさに夜空に浮かび上がる宝石の城という感じ、僕たちは言葉もなくただただ見惚れるのであった。

取材・文/藤原かんいち&ヒロコ(2005/07/01)

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