BBB MAGAZINE

  • 大人のたしなみとしてベスパに接してみよう!

    2016.03.03 / Vol.21

    スモールで遊ぶ #08

CREDIT

    • ライター
    • 執筆

    隅本辰哉

    • 撮影

    隅本辰哉

    • バイク

    Vespa

今回はある意味で特別編と言えそうです。......と言うのもスモールで遊ぶためにベースとなる中古車を探し始めてみると、なんだか雰囲気の違う車両に出会すことがあるんです。それって一体なんなのか? 今回はそんな疑問を解決しちゃおうという内容でお届けします!

台湾で作られたベスパ

台湾ベスパ

信用できる詳細な資料が見つからないので、少々推測混じりの話になることをご了解いただきたいでのすが、かつてピアッジオが世界中でライセンス契約を交わしてベスパを現地生産していた時代がありました。その流れでアジア地域の現地メーカーとして契約したうちの1社が台湾ベスパと呼ばれるメーカーでした。
もちろんライセンス契約に基づいてベスパというスクーターを現地生産していたワケなので、本当ならイタリア本国とまったく同一のものが作られるハズです。ところが契約的にどうなっていたのかわかりませんが、台湾ベスパ製のモデルはビミョウにイタリア本国製モデルと異なっていました。
どこがどう違っているのかはこの後触れていきますが、そうした背景の台湾製ベスパをジャパンベスパという会社が正規輸入元となって日本国内で輸入販売していた時期がありました。そのため中古車として流通するベスパのなかに、これまで説明してきたスモールシリーズとは少々雰囲気の異なるモデルがときどき混ざっていることがあるワケです。そこで「スモールで遊ぶ・第8話」では、それをきちんと解説しておこうと思って取り上げてみることにしました。今回紹介するのはそうした時代の台湾製ベスパだったりします。

◎ジャパンベスパの功績

ジャパンベスパ タグ

ベスパの輸入販売に関して、現地法人・ピアッジオグループジャパンが設立されるまでは大阪を拠点とする輸入商社・成川商会によって行われていました。 だけどそれ以前は数年で輸入元が変わったり、同時に複数社が輸入販売を行っていたりとかなり混沌とした状態が続き、その時期にベスパを世に知らしめることに成功したのがジャパンベスパでした。 ベスパのイメージとして多くの人が松田優作主演のTVドラマ・探偵物語を思い出すんじゃないかと思いますが、このドラマに白いベスパを車両提供していたのがジャパンベスパでした。ほかにもさまざまなメディアに車両提供を続けるなど、メディア露出に貢献することで一気にベスパの認知度を高めるキッカケとなった功績は大きかったといえます。 ただ時代の流れとしてジャパンベスパから成川商会へと輸入販売の権利が移っていき、それでも成川商会から車両を仕入れてイタリア本国製ベスパの販売は継続していましたが、いつしか直接輸入販売できる商材として台湾ベスパに行き着いたのだと思われます。

カタログ
ジャパンベスパが用意した台湾ベスパのカタログと価格表。仕様の異なる2モデルとして、50SSと50SS Classicが選べたみたいです
スペアタイヤ
撮影車両はレッグシールド内側にスペアタイヤを装備する仕様ですが、カタログ的にはフロントボックスorスペアタイヤを選べるとなっていますね
シート
シートについても撮影車両はダブルシートを装着していますが、カタログ的にはサドルシートorダブルシートから好みのスタイルを選べるとしています

台湾製とイタリア製ではどこが違う?

台湾製のベスパ

台湾ベスパと一口に言ってもモデルバリエーションは複数あって、今回取り上げるのは50SSという名称のモデルです。サイズ感と基本的な作りの部分からスモールベスパと判断でき、主力モデルとなる50ccクラスであることを考えればイタリア本国製の50Sと比べるのが妥当です。 なお50Sと50SSという表記ではなんだかわかり難い気もしますので、ここでは50Sを"イタリア製"として50SSは"台湾製"という表記で話を進めていきます。それでは50Sと比較してどんな違いがあるのかを見ていきましょう。
決定的な相違点は電気系になります。イタリア製が6V/ポイント点火式なのに対して、台湾製のほうでは12V/CDI点火となっています。つまり一般的に言えば電装が強化されていることになりますが、どうしてそうなっているのかの理由は不明です。それと外観上、ハンドルまわりとシート形状も大きく異なります。 ところで販売当時の話として、メイドイン台湾であることをイマイチという印象で捉えるケースが少なからずあったそうです。ただ実際には乗りやすくスピードも出ていましたから、その辺りを「イタリア製よりも乗りやすいし速いよ」なんてセールストークするショップもあったそうです。速さは電力の安定供給が要因として考えられますが、乗りやすさはシフトのしやすさにあったようです。もちろん当時の整備状況もあると思いますが、スムーズでカチっとしていてシフトしやすいものだったという声を聞きますしね。その他の台湾製ならではの仕様については、以下にジャパンベスパのカタログ記載内容をそのまま転載することにします。ちなみに1985年当時の価格表によると、50SSは29万8000円のプライスでした。

12VCDIに強化されている

「陽気なイタリアが産んだ、小意気なベスパ。」 タウンではもちろん、緑いっぱいの郊外でも小意気なベスパ。このスタイルはファッションを追求して生まれてきたものではありません。ベスパの美しさは、機能です。片持サスペンション、ダイレクト・トランスミッション、モノコックボディ。そのどれもが、軽快で快適な走りのために選ばれました。電装関係も6Vから12Vに変更。エンジンキーの新設で、盗難の心配も減りました。サドルシートorダブルシート、フロントボックスorスペアタイヤ、お好きなスタイルを選べます。あなただけのベスパを手にいれてください。
※ジャパンベスパのカタログより

台湾ベスパ後ろ
台湾ベスパ前

50SSのスペック

最高速度 60km/h
エンジン 2サイクル空冷単気筒/49.77cc
ボア×ストローク 38.4mm×43mm
始動方式 キックスターター
点火方式 CDI/12V/25W
潤滑方式 混合
燃料消費率 55km/L
タンク容量 5.6L
ギヤボックス 4スピード/グリップコントロール
タイヤサイズ 3.00×10
全長×全幅×全高 1655mm×670mm×1015mm
ホイールベース 1180mm
重量 73kg

※ジャパンベスパのカタログより

「軽快な走りを追求したベスパクラシックシリーズのメカニズム」

◎モノコックボディ
軽くて堅固なモノコックボディを採用。振動の少ない、快適な乗り心地を実現しました。
◎片持式サスペンション
コイルスプリング、ハイドローリックダンパー採用の片持式サスペンション。美しい外観とメンテナンスの手軽さを両立させたメカニズムです。
◎12V電源を採用
12V、CDI点火を始め、12Vのため夜間走行も明るくて安心です。

◎女性でも楽々グリップ・チェンジ
4スピードのギヤをグリップ部でチェンジ。スムーズな操作性を確保しました。女性にやさしいクラシック・シリーズです。
◎エンジンキーも新設
エンジンキーを付けましたので一層安心。ハンドルロック、シートロックも標準装備仕様。
◎アクセサリー
スクーターの個性を演出していただくためにアクセサリーパーツが豊富に用意しています。詳しくは、ベスパアクセサリーカタログをご覧ください。
※ジャパンベスパのカタログより

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