BBB MAGAZINE

  • 藤原かんいち電動バイク世界一周 夢大陸オーストラリア編

    2008.11.24 / Vol.45

    「砂漠に倒れる!」

CREDIT

    • 人型
    • メモ

    藤原かんいち

    • カメラ

    藤原かんいち

    • バイク

    モトラ

VOL.45 「砂漠に倒れる!」[夢大陸オーストラリア - 番外編 -]

10分...20分過ぎても帰ってこない。バイクを持って行かれたのか!? YHの人だからと安心していたことを後悔する。30分位待っただろうか、ようやく姿を現した。
「おい、コラッ! この道だけだって約束しただろ...って、あれ、オマエ~ッ、エンジンがメチャクチャ熱くなってるじゃないか!」

蛇のようなアラビア文字
アルジェリアの道路標識には蛇のようなアラビア文字に、フランス語が併記されているのは親切だが...僕はどちらも読めない、アハハハ

エンジンに手をかざすと、もの凄い熱を発している。どうやらローギアで延々と走っていたらしい。「運転できる」なんてうそつきやがって。この野郎、頭に来る。シリンダーが焼き付いたらどうするんだ。ところが怒りに震える僕を後目に、その男はのんきな顔で
「ともだち~もう一回運転させてくれよ~」
とニヤついている。カッと頭に血が上り
「ウソばっかりつきやがって、オマエなんか友達じゃない! ふざけるなっ!」
と言葉を吐き捨て、YHを後にしたが、怒りの炎はしばらく消えなかった。
サハラ砂漠縦断ルートはアルジェリアからニジェールに抜けるホガールルートと、マリへ抜けるタネズロフルートの2本に別れる。 そこで僕はライダーの7、8割が通っているホガールではなく無給油区間が150km長いタネズロフを、最も気温が高い5月を選んだ。その理由はより困難なことに挑戦したい、人がやらないことをしたい、それだけだった。
今考えると、無謀以外の何物でもないが、その頃の僕は若く、燃える情熱をどこかに叩きつけなければ気が済まなかった。若さとはホントに怖いもの知らずである。

アルジェを出て9日目。

北アフリカの代表料理「クスクス」
アルジェリア人の家に招待され、北アフリカの代表料理「クスクス」をご馳走になる。一つの大皿をみんなでつついて食べるのが庶民的

アルジェを出て9日目。レガン到着。ここの町を最後に、次の給油地ボルジュモクタールまでの650kmは道すら存在しない、360度の地平線の上に頼りない轍が伸びているだけ。正真正銘「不毛の大地」が広がっている。
砂漠縦断に備えてメインタンク(9リットル(以下L))を満タンにし、さらに2つの予備タンクに19Lガソリンを注ぎ込む。
どこまで燃費が落ちるか分からないがこれで1,100kmは走れるはず。そして最後に食料と水。水はバイクに6L、ザックに10L詰め込む。背負うと水10?は鉛のように重く、酔っぱらいのような千鳥足になった。
普段より30kg以上も重たいが、まともに走れるのか。目に見えない黒い不安が押し寄せてくる。不安を押し戻すようにアクセルと開けると、ゆっくりタイヤが動いた。 進み出すともう後戻りはできない。こうなったら、なるようにしかならないんだと覚悟を決め、砂の海に飛び込んだ。
「...ハッハッハッ...もう走れない!」

10分走ると、バイクを降りてザックを放り投げた。走っているだけで息が上がる。暴れるザックを支えるのが予想以上にきつい。それから5分おきに止まってはザックを降ろし、水をガブ飲みを繰り返した。水は胃袋に達する前に蒸発してるんじゃないかと思うほど、いくら飲んでも飲み足りなかった。
股が冷たいと思ったら、水タンクから水が漏れジーンズがビショビショに濡れていた。
「チッ、オンボロ水タンクがっ!」
疲れと怒りが一気に爆発。
砂漠に寝ころび大の字になる。疲れた...。そこで一か八か、このままでは次の町に着く前に、僕の体がダメになると思い、水が漏れるタンクは捨てることにした。
走り出すと今度はフロントの予備タンクからガソリンが噴出。驚いてパンキングを解き、あわてて残りのガソリンをメインタンクに注いだ。3~4Lは流れただろう、大切なガソリンを...なんて事だ。夕方テント設営。一日目は35kmの走行が限界だった。

翌朝、再びハンドルを握る。

レガンから南
レガンから南はハッキリとした「道路」は存在せず、こんな雰囲気の轍がとぎれとぎれ延々と続いている。いつなくなるのか...とても心細かった

しかし、バイクなのに、どうして全力疾走の後のようにノドが渇くんだ? 唇もひび割れて出血を始めた。この最悪の状態を何とか脱しようと思い悩み、濡らしたバンダナを口にくわえ走ってみることにする。するとこれがなかなか良く、少しだがノドがラクになった。
日中の暑さは殺人的。体力を考えて昼の走行は避けることにした。といっても見渡す限り砂の地平線に木陰はない。そこで僕は砂漠の唯一の人工物、道標として立つポストにフライシートを引っかけ、ゴリラと結び1?の日陰を作ることにした。日陰に横たわり日が傾くのを待つ。しかし、疲れているのに眠れない。食欲も湧かず、ノドだけが際限なく渇く。夢遊病者のように水を飲んでいる、気が付くと10Lの水が半分以下になっていた。
「...このままでは水が足りなくなる...」
ジッとしているのに息が苦しく、水を飲まないと気が狂いそうだ。立ち上がると足がもつれて転んでしまった。まずい、日射病かもしれない。このまま動けなくり、ここで野垂れ死ぬか? 急に恐怖が襲ってくる。
「いやだ、まだ死にたくない...」
心の奥で叫び、這いつくばるようにしてバイクに跨る。確かレガンの南205kmに水場があると言っていたな、その情報が正しければあと6時間でたどり着けるはず。そこまで行けば助かるかも。くたばってたまるか。
砂の量は徐々に減り、時速20km近い速度で走ることができた。頼りは数?おきに立つポストだけ。これを見失ったら、終わり。目を皿のようにして地平線のポールを探す。
どれくらい走り続けただろうか...南の地平線にオレンジ色の光が浮かび上がった。頼りない灯りだが、あれは確かに人口的な灯りだ。あそこに人がいる。あそこに行けば助かる。
僕は最後の力を振り絞るようにハンドルを握り、大きく目を見開き、光へ向かって一直線にアクセルを開けた。

人気コンテンツ