BBB MAGAZINE

  • 藤原かんいち電動バイク世界一周 夢大陸オーストラリア編

    2008.11.24 / Vol.39

    「巨大な川に挑む」

CREDIT

    • ライター
    • 執筆

    藤原かんいち

    • 撮影

    藤原かんいち

    • バイク

    モトラ

VOL.39 「巨大な川に挑む」[夢大陸オーストラリア - 番外編 -]

「ドヘェ~ッ!」
僕の目の前に立ちはだかったのは、これまで越えてきたの川が小川に見えるくらい巨大な川だった。川幅は50m近くあるだろう。

4WDのツアーバス
これが巨大な川。4WDのツアーバスが突入した

まあ、確かにこの道はメインルートではない、だけど一般車の通る道なんだぞ。これだけ大きな川に橋が架かっていないことは日本の常識ではあり得ないことだった。
この川を自力で越えるのか...まったくとんでもないところだよオーストラリアは...。しかし、そんな小さな日本の常識が次々に壊れて行くのがこの旅のおもしろさでもあった。
川の横に立っていた「ワニ出没・水泳禁止」の注意看板に一瞬ドキリとしたが、透明だからワニが近づいて来たら見えだろう、という実にアバウトな自己解釈の元、偵察に向かった(後で考えると何て恐ろしいことをしたのかと思う)。
バチャバチャと川を歩き回った結果、水深はヒザからヒザ上くらいあることが分かった。エアクリーナーは水面ギリギリライン、エンジンとマフラーは完全に水没する深さだった。この川幅と深さからしてこれまでの方法はどれも通用しそうになかった。
散々考え迷った末に僕は大きな決断を下した。それは川を渡るには最も安全だが、最も時間のかかる困難な方法であった。

エンジンを降ろした経験が一度もない

川渡り
ようやくエンジンが外れた、これから川渡り

その方法とは、バイクからエンジンを降ろし、水に浸からないようエンジンを抱えて川を渡るというものだった。この方法ならエンジンに水が入る心配はない。エンジンの次は荷物を担いで、その次はエンジンを外した車体を押して渡るのだ。どうだ、まいったか。
確かにエンジンを一度降ろし、対岸でまたエンジンを載せるというのはとんでもなく手間のかかる作業には違いない。だが、誰の手も借りずに自力で渡る方法は他に考えられなかった。
ただひとつ心配があるとすれば...それは僕がエンジンを降ろした経験が一度もないということだった。アハハハ...。
そうと決めたら行動。まずは荷物を降ろす。次はエンジンだ。キャブレター周辺のワイヤーとホースを外し、さらに電装ケーブル、マフラー、キック、各ボルト、チェーンなど次々に取り外して行く。
どこをどう外したのか忘れないように、慎重に作業を進める。こういう細かいことは苦手な僕だが、ここではそんな泣き言を言っていられない。エンジンを降ろしたのはいいが、対岸で組み上げられなかったでは済まないのだ。
1時間以上かけてどうにか車体からエンジンを外すことができた。後は全てを対岸へ渡して組み上げるだけだ。
まずはエンジンなしの車体を押して川を渡り、次はエンジン以外の部品と荷物を担いで渡る。再び川を渡るともうヘトヘト。この時点で僕は10回近くも川を横断していたからだ。自分でもハッキリ分かるくらい体力を消耗していたが、そんなことはおかまいなしに勢いに任せてエンジンを肩に載せ川へ突入した。
川の中盤に差し掛かったときだった、隠れていた岩に足を取られ、大きくよろめいた。あっ、転ける。バシャバシャ! 水飛沫が踊る。
「やばい!」

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