マン島TTレース2017 レポート

photo & report/Yuki KOBAYASHI
写真&文/小林ゆき


Vol.1 いよいよ開幕、2017年マン島TTレースの見どころガイド

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  世界でもっとも歴史の長いオートバイのレース、マン島TTレース。  マン島は大ブリテン島とアイルランド島の間にある淡路島ほどの大きさの島で、イギリス王室に属するものの、国としてのいわゆるイギリス(UK)からは独立した国(地域)です。  文化的背景にはバイキングとケルト文化が色濃く残り、マン島語(マンクス・がエリック)がいまだに公用語であるほか、独自の議会や法律、通貨を持つユニークな島国です。

  世界中から数万台ものバイクが集まるマン島TTレース。レースをしていない時間帯は、ご覧のようにレースのスタート&ゴール地点である聖地“グランドスタンド”にたくさんのバイクが集結します。
  イギリスやアイルランドのナンバーはもちろん、フランスやイタリア、ドイツ、スペインなど西ヨーロッパや、遠くはチェコやアメリカのナンバーも見かけましたよ!
  グランドスタンドの裏は、普段は公園になっていますが、TTウィーク中はレーシングサービスやチームのトラックが並び、パドックとして使われます。公道レースなのでパドックに入るのはもちろん無料です。フードエリアはくつろぐツーリストたちでいっぱいですね!

  TTレースの発祥は、自動車技術の発展を願うイギリスの自動車産業界の思惑と、観光の目玉が欲しかったマン島政府の思惑が合致し、1904年にトライアルとして四輪、三輪、二輪が混走の公道レースやヒルクライムレースが行われました。
  その後、1907年に四輪とは別開催となった現在の二輪のTTレースが始まりました。
  “TT”とは「ツーリスト・トロフィー」の略。直訳すれば「旅行者杯」となりますが、旅をする人たちで行われたわけではなく、当時まだ普及していなかった公道用市販車の信頼性を競うレースとして始まりました。
  オランダで行われるモトGPの俗称「ダッチTT」や、アウディの「TT」の名称も、実はマン島TTレースが由来なんですよ。

  TTレースが開催されるのは、毎年5月下旬から6月上旬の2週間です。  現在開催されているカテゴリーは、スーパーバイクTT(1000cc)、サイドカーTT(600cc)、スーパースポーツTT(600cc)、スーパーストックTT(1000cc)、ライトウエイトTT(650cc2気筒)、TT Zero(ゼロエミッション、事実上の電動バイクレース)、シニアTT(スーパーバイクTTに同じ)があります。
  日曜日を除く土曜日から金曜日の夕方6時ごろから9時ごろまで、予選も兼ねた練習走行時間「プラクティス」が行われます。 予選タイムをクリアしたライダーは、土曜日、月曜日、水曜日、金曜日の4日にわたって行われる決勝レースを走ります。 夜にプラクティスが行えるのは、マン島は緯度が高いのとサマータイム実施時期のため、夜10時ごろまで明るいからです。

  2週間の会期のために準備されるタイヤの数!マン島は伝統的にダンロップタイヤユーザーが多いのですが、今年はメッツラーも来ています。また、サイドカーはエイボンタイヤを使用しています。

  コースは島の中心部からスタートし、島の北側に向かい、市街地、住宅街、牧草地帯などを通り、マウンテンと呼ばれる標高の高い山のエリアを結ぶ一周約60キロを周回する公道サーキットが設定されています。  TTコースは走行の少し前に完全に閉鎖され、1600人ものボランティアのマーシャル(コース監視員)によってシャットアウトされます。

  決勝レースは、1台ずつ10秒ごとのインターバルでスタートするタイムトライアル方式で行われます。  このため、見た目には順位がわかりにくいのですが、詳細な情報をラジオで実況するため、観客はラジオの情報を頼りにレースの行方を見守ります。  このレディオTTはインターネットのオンデマンド放送もしているので、日本でもオンタイムで実況を聴くことができますよ!

check!→  http://www.manxradio.com/

  スタートしてすぐのブレイヒルは、TT初期の時代のスタート地点でした。観客が立っている場所は、当時のスタンドがそのまま残っている場所です。ブレイヒルはマシンのスピードが250キロオーバーにもなります。

  上位3人はピットレーンで仮表彰を受けるほか、トップからのタイム105%までが「シルバーレプリカ」、同じく110%までが「ブロンズレプリカ」と呼ばれるトロフィーが授与されます。  トロフィーなのになんで「レプリカ」なのかというと、表彰台で優勝者が掲げるトロフィーだけが本物、という意味があるそうですよ。  ちなみに、TTレースは賞金レースとしても昔から有名で、今年も1レースにつき各周回時の順位によって金額が異なりますが、もし最初から1位を保った場合、約150万円から300万円の賞金となります。  TTウイーク中に5~6レース出場するライダーもいるので、1000万円越えも夢ではありません。

  今年は予選ウィークからかなりたくさんのツーリストが来ていて、人気の観戦スポット、バラフブリッジはこの通り柵越しに黒山の人だかり。もちろん観戦禁止の場所もありますが、公道レースですから基本的には観戦するためにお金は必要ありません。
  そのバラフブリッジは道路形状から、必ずといっていいほどバイクがジャンプする場所です。サイドカーもジャンプするんですよ。ミラータイプの外装が印象的なマシンは、アプリリアのエンジンを積んだノートンです。ライダーはデイビッド・ジョンソン選手。
  TTレースの直前に大けがを負ったジョン・マクギネス選手に代わり、急遽参戦することになったブルース・アンスティ選手。チーム無限のマン島TT参戦は2012年から今年で6年目となりました。

  2017年のプラクティスは最初から天気に翻弄されました。そもそも天候が変わりやすいマン島。霧がでると救急ヘリコプターが飛べなくなるため、走行中止となります。  今年は天気のせいで土曜日、月曜日、火曜日の3日間走行が中止となり、このままでは十分なプラクティスができないと判断した主催者が大幅に日程を変えました。  本来、6月3日(土)からスーパーバイクTTとサイドカーTTが行われるはずでしたが、この日をプラクティスの追加日程に変更。  日曜日は教会との兼ね合いで以前は法律上レース開催ができませんでしたが、数年前に荒天などの場合に限り午後から開催できるように法改正されました。今年は4日(日)にスーパーバイクTTを順延、さらにプラクティスを追加。  このあと、5日(月)にサイドカーTTとスーパースポーツTTのレース、6日(火)は本来レース日程がありませんでしたがここにスーパーストックTTのレースが順延され、各クラスのプラクティスも追加されました。

  一昨年、昨年と、TTの登竜門であるマンクスグランプリに出場、いよいよ今年TT参戦が認められた山中正之選手。600ccのCBRでスーパースポーツクラスにエントリーしています。
  マン島TTレースレポートは、マン島に通い続けて21年、20回目のTTレース、23回目の渡萌となる小林ゆきが担当いたします!
ちなみにこのマシン、マン島で製作され、昨年のボンネビルでクラス優勝したマシンだそうです。

  さて、3日(土)までのプラクティスの話題としては、スーパーバイクはスズキにスイッチし新型GSX-R1000を駆る去年の覇者マイケル・ダンロップがどんな走りをするのか。  また、昨年に引き続きBMWに乗るTTウィーク全勝したこともあるイアン・ハッチンソン、カワサキからBMWにスイッチしたピーター・ヒックマン、地元マン島出身でめきめき頭角を現しているダン・ニーン、昨年に引き続きRC213Vで挑むブルース・アンスティ、昨年はレース活動を休止し今年ホンダワークスライダーとしてレースシーンに戻ってきたガイ・マーチン、BSBや8耐で活躍し今年はノートンに乗るジョシュ・ブルックスなどなど、話題は尽きません。  残念ながら、現役最多の23勝を挙げているジョン・マクギネス選手は、TTの前に北アイルランドで開催されたノースウエスト200という公道レースで負傷し、TT参戦はなりませんでした。  チーム無限の電動バイクレーサー神電六に乗る予定でしたが、昨年の優勝者アンスティ選手が代役として走ることになりました。マーチン選手とともに無限の連覇なるか、こちらも楽しみです!!

バイクジャーナリスト 小林ゆき

【略歴】横浜育ちのバイクブーム世代。バイク雑誌の編集者を経て、現在はフリーランスのライダー&ライター。バイクを社会や文化の側面で語ることを得意としている。最近、KAWASAKI Ninja H2を購入。普段は総走行距離24万㎞に達した愛車GPZ900Rでの街乗り派だが、自らレース参戦したり鈴鹿8耐監督を経験するなど、ロードレースもたしなむ。ライフワークとしてマン島TTレースに1996年から通い続け、モータースポーツ文化について研究中。

http://yukky.txt-nifty.com/bikeblog/

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