BBB MAGAZINE

  • 藤原かんいち電動バイク世界一周 夢大陸オーストラリア編

    2008.11.23 / Vol.09

    「やったぜ!大陸縦断達成」

CREDIT

    • ライター
    • 執筆

    藤原かんいち

    • 撮影

    藤原かんいち

    • バイク

    モトラ

VOL.09 「やったぜ!大陸縦断達成」[夢大陸オーストラリア - 番外編 -]

やったぜ!大陸縦断達成

何もない道に電柱が現れると町が近い証拠。オーストラリア最北の都市「ダーウィン」も近い。スタンドで給油をしていると、観光バスからゾロゾロと人が降りてきた。僕の周りに集まってきて「どこから来たんだ?」「何ヶ月で一周するんだ?」「このバイクは何cc?」と質問攻め。連日同じ質問を受けているのでこの答えだけはスラスラと出てくる。他はまだまだちんぷんかんぷんのことが多いけど、英語の通信簿が「2」の僕でも、勉強をすれば通じるんだとということ実感した。もっともっと勉強しなくっちゃ。

ダーウィンの街
ダーウィンの街では贅沢三昧。自炊をせず連日ファーストフードを食べまくった。

7月27日。ダーウィン到着。
シドニーから41日目、ついにオーストラリア大陸縦断を果たした。地図を見るとこんなに遠くまで遙々来たものだと改めて思う。町外れのキャラバンパークにテントを張り、無人販売所で買った50セントの激安メロンでささやかな祝杯を挙げた。
しかし、そんな爽やかな気分とは裏腹にこのところ睡眠不足が続いている。夜の8時を過ぎても気温が30度を切らない日が続いているのだ、暑くて暑くて、もう死にそう。寝返りを打つ度に滝のように汗が流れる。今は真冬のはずなのに...熱帯はやっぱり違うな。
到着の翌日、起きると真っ先に中央郵便局へ向かった。日本の友人から局留めの手紙が届いているからだ。郵便局で山盛りの手紙を受け取るとむさぼるように封を開き、狂ったように読みふけった。
ひとりひとりの顔を思い浮かべてはニヤニヤ。「あの野郎、何言ってるんだ!」「相変わらずだなぁ...」「そんなわけねーだろ!」手紙に突っ込みを入れながらゲラゲラ。この様子、知らない人がさぞかし気持ち悪いだろう。みんなが送ってくれた手紙は大陸縦断達成の、最高のご褒美だった。みんな、ありがとう。
「よ~し、これからも頑張るぞ~っ!」

新しいグローブを購入。

ロバがやってきた
キャンプをしているとどこからかロバがやってきた。

気合い十分で走り出したのはいいが30分走ったところで、荷物に挟んでいた、グローブの片方ないことに気が付いた。慌てて引き返したがどこにも見当たらない。クソ~ッ、どこかで落としたらしい。仕方なく近くのバイクショップで新しいグローブを購入。気合いを入れ直して再スタートだ。
ダーウィンからキャサリンまでの330kmは帰路と同ルート、面白味は半減なのでほとんど休憩もせずに1日半で一気に走り抜けた。キャサリンで長くお世話になったスチュアートハイウエイとここでさよなら、右折してウエスタン・オーストラリア州(以下W.A州)へ向かった。

西への道、ビクトリアハイウェイに入ると、路面はスチュアートハイウェイよりもさらに粗悪になり、交通量も激減。僻地へ向かっていることを実感する。
キャサリンを出て3日目、前方に大きな立て看板が姿を現した。距離からして州境だろう。近づくと案の定「WEL COME WESTERN AUSTRALIA」の文字。5つ目の州に突入だ。
州境に着くと車が列になり、トランクを開け検査を受けていた。W.A州は他州からの病原菌の侵入を防ぐために、果物や野菜等の持ち込みを禁止しているのだ。これまでの州境はフリーパスだったので、何だか国境を越えるようでドキドキする。車の後で待っていると、検査員がやって来た。
「こんにちは、果物や野菜は持っていますか?」
「ノー」
「トマトやポテト、オレンジ...何もないですね?」
「はい、持っていません...」
「分かりました、ありがとうございます、どうぞ行って下さい」
検査は口頭で質問されるという形式的なものだったが、初めて体験に心臓の鼓動が高鳴った。

なぜかクローズの札がかかっている...

W.A州最初の町、クヌヌラで一泊。翌朝、銀行へ行くと、なぜかクローズの札がかかっている...
「あれ? おかしいなぁ、開店時間は過ぎているのに...」
他の銀行へ行ってみるが、どこも休み。えっ、まさか、今日、もしかして祝日!? 慌ててガイドブックを開くが8月3日には特に何も記されていない。あれぇ、おかしいなぁ...
そこで、オーストラリアは時差があることを思い出した。ガイドを見るとW.A州とN.T州の時差は1時間半と書いてある、ということは、まだ9時ちょっと過ぎ。なーんだ、10時オープンの銀行が開いているはずがないじゃないか、アハハハハ...。さっきまで血相を変えて走り回っていた自分が可笑しかった。
しかし、この旅では朝日で目を覚まし、腹が減ったらメシを食い、日が沈んだら眠る...そんな日々を過ごしていると時計をほとんど見ない。こんな旅をしていると時刻を知る必要がなくなるのだ。
そして、サラリーマン時代は毎日同じ電車に乗り、食べたくもないのに12時になるとランチを食べるのが当たり前だと思っていたことが、それは人間の本来の生活リズムではなく、時刻にコントロールされた暮らしであることに気がつくのである。
今の僕に必要なことは、自然のままに生きること、前進すること、旅を楽しむこと。長い旅をしていると本当に大切なことは何かが、明確に見えてくるものなのかもしれない。

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