BBB MAGAZINE

  • 大人のたしなみとしてベスパに接してみよう!

    2016.12.01 / Vol.30

    レストア寄稿-プリマセリエその5

CREDIT

    • ライター
    • 執筆

    隅本辰哉

    • 撮影

    隅本辰哉

    • バイク

    Vespa

前回の作業では丁寧な塗装とその後の丹念な磨き込みによって、全パーツを仕上げるところまで到達した相澤さん。それらを組み付け終わって、残すはいよいよエンジンのみというところまでが前回の内容でした。
さて、今回はとうとう佳境。その内容と"相澤調べ"に俄然注目です!

いよいよ佳境! だけど前回を振り返っておこう!!

当時のベスパ50カタログ

Vespa 50は1963年に登場し、相澤さんの車両はまさにそのファーストイヤーである1963年モデルとのこと。この1963年モデルはフレーム番号で1001〜6960まで、ということは5959台がラインオフしたことになります。つまり希少性の高いファーストイヤーモデルの中の1/5959台となり、こうやってデータで確認するとますます希少な1台なんだなと実感しますね。
そろそろ佳境に入ろうという段階まで進んでいる「レストア寄稿-プリマセリエ編」ですが、第5回目となる今回もいつも同様前回のおさらいからいってみましょう。
手始めにフロント周りを仕上げていきました。フロントフェンダーの塗装を全剥離して、板金とパテによる整形......からの塗装まで全てを相澤さんの手で進めていってます。これに同時進行で組み上げていったフロントフォーク周りを合わせ、とてもキレイにフロント周りを完成させています。
そこからボディに手を付けますが、こちらは全剥離後にプロへ依頼。サフェーサーが塗られた状態で相澤さんの手元に戻り、そこからサフェーサー面の研磨と洗浄、そして下地色を入れて"雑に本塗装"していきます。この雑な塗装とは、イタリア職人的な仕事の再現として相澤さん自身が狙ってやっています。しかも塗って終わりではなく、塗面を丁寧に水砥ぎして最終的にコンパウンド仕上げまで丹念に行うというこだわりようもサスガです。そして仕上がった全パーツを組み付け、残すはエンジンのみという段階まで漕ぎ着けました。
また、注目の"相澤調べ"も充実していましたね。年代による下地色の違い、リプロフェンダーが最初期型とは形状違いで使用不可といったポイントを解説してくれています。ほかにもホイール、タイヤ、ハンドルピンチボルトの違いなどについても触れています。
さて、ここからはいよいよ今回の作業メニューに突入です!

エンジンをビルドアップ

Photo-1
Photo-2

相澤さんのレストア日記「愛しのプリマセリエ」は全8話構成なんですが、今回はその7話目を再構成してお届けしていきましょう。以下は相澤さんのレストア日記からの転載記事となります。

前回の日記から2か月以上経ってしまいましたが、長く険しかったレストア道も佳境に入り、ようやくゴールが見えてきました。それで本日はいよいよ、エンジン編です。 過去6回に渡り数多くの"匠の技"(笑)を披露して参りましたが、実はエンジンOH(オーバーホール)は全くもって自信がありません! そこでエンジンOHの強力な助っ人としてVCM(VESPA CLUB MIYAGI)の仲間の一人にお手伝いいただきました(*注)。
まずは7月初旬、エンジンを全バラに(Photo-1)。その後しばらくの間、福島県のベスパ仲間にケースを預けておりました。実は入手時よりケースに一ヶ所、半端ないダメージがありまして......。ご覧の通り、一番下のボルトステーがぶつけたかなんかで欠損していたんです(Photo-2)。それで以前からワンオフパーツ製作や溶接で世話になっていることもあり、今回もその仲間に相談すると「大丈夫。完璧に直します」との心強い返事が! そんなやり取りから待つこと一か月余り、完璧な状態で戻って来ました(Photo-3)。本当に感謝です。ありがとう!

その流れでケース周りの細かな削れキズもキレイに修復(詳細は囲み記事「ケースについた傷を修復」をチェック)しちゃいました。そうして下準備も全て終わらせることが出来、交換用のパーツ類も全部入手が完了しています。なので宮城県でベスパの面倒を見てくれる数少ないバイクショップ・Vee's Factory(http://www.fan.hi-ho.ne.jp/akatsuka/vees/)に持ち込んで、シリンダー&ヘッドのブラスト処理とベアリング交換+クランク圧入といった専門的な作業を施してもらいました。......と、ここまで来るといよいよ組み上げる作業を残すのみ(Photo-4)。エンジンOHの助っ人に再びお世話になります!
慣れている人なら組み上げる作業自体、あるべき場所にあるべきパーツを戻していくということなので苦もないことなんでしょう。ミッションを組み付け(Photo-5)、ガスケットを合わせ(Photo-6)てケースを閉じればついにエンジンが完成(Photo-7)です。早速シュラウドとフライホイールカバーを装着してみました(Photo-8)。う〜ん......やっとこの姿を拝めたわぃ♪
(*注):エンジンOHの強力な助っ人とある相澤さんのお仲間ですが、2016年10月1日に急逝されました。ご冥福をお祈りします

Photo-3
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Photo-4
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Photo-5
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Photo-6
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Photo-7
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Photo-8
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ケースについた傷を修復

Photo-あ
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Photo-い
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Photo-う
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Photo-え
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Photo-お
Photo-お
Photo-か
Photo-か

ケース周りの補修材として比較的ポピュラーな方法だと思われるのはデブコンと呼ばれるパテを使うことだと思いますが、相澤さんは今回あえて耐熱性のある金属接着用エポキシパテとして注目のブレニー技研/GM-8300(Photo-あ)を試してみることにしたそうです。
それで気になる相澤さんの手応えは「値段も手頃だし、これ良いですよ」とのこと。
作業行程的には、2液を混合(Photo-い〜Photo-え)してから傷の目立つ箇所を埋めます(Photo-お)。相澤さんは、そこでハンダゴテを使って熱を加えながらしばらく放置したそうです。そして完全に硬化した後、ペーパーを当ててさらに磨き込んだ状態がこちらです(Photo-か)!
「マジマジと見なければ判らないレベルまで修復出来ました」と、相澤さんも仕上がりには大満足のようす。

ついに完成したVespa50

Photo-9
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Photo-10
Photo-10
Photo-11
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相澤さんのレストア日記「愛しのプリマセリエ・第7話」では、エンジンが完成するところまで辿り着いています。ここまで来れば、後はそのエンジンを車体に積むだけ......ってことで、相澤さんはとっとと積み終えてしまったようです。それではいよいよ大詰め、ここから先はレストア日記・第8話の内容を再構成してお届けします。
あれは今からちょうど30年前......(この日記は2014年5月のものになります)。「レストア寄稿-プリマセリエ編」の第1回目でも触れていますが、その当時16歳だったオレは初めてのベスパを手に入れました。 そのベスパとは50Sで、東京にある株式会社ベスパ(http://www.vespa99.com/)で手に入れました。
やはり第1回目で御覧頂いた懐かしい写真(Photo-9)ですが、手前にアメリカの国旗が写っているのわかりますか? 当時は車体にこの旗をくくりつけ、ブイブイ言わせて走り回っていました。あー、恥ずかしい(笑)。
実は購入時、ベスパはアメリカ製のスクーターだと思っていたんです。なにせベスパで走り回っていたロックンローラーの先輩に憧れて手に入れましたから 、「外国=アメリカ、50S=フィフティーズ、そしてアメリカで1950年代に造られたスクーターがそのまま生産されている」......などと本気で思っていたんですよ。
ところが付属のオーナーズマニュアルを見ると、「MADE IN ITALY」の文字が......ビックリです! 「イタリア製=スパゲッテイ=ナポリタン」、30年前の16歳のガキが抱くイタリアのイメージなんて、まぁこんなもんです(笑)。それで、そのオーナーズマニュアルを見て「なんかオレのと違うなぁ......」と思ったのがこの写真(Photo-10)。この写真こそが、最初期型のスモールを知ることになったキッカケでした。
さて、そんな懐かしさたっぷりのあの頃から早30年......、当時の自分自身へ贈るレストア日記もついに完結間近です。まあ本当はスモール生誕50周年の昨年2013年中に完成させたかったんですが、エンジントラブルなどもあって最終的な完成は2014年になってしまいました。それでも2013年のVespaBRUNCH(毎年秋に開催されるベスパフリークの祭典)には不動状態で持ち込み、そこでなんと特別賞をGET(Photo-11)することが出来ました。
―引用元: レストア日記「愛しのプリマセリエ」

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