BBB MAGAZINE

  • 全国「旅ごはん!」バイク紀行

    2011.10.25 / Vol.22

    元車庫前○宮の中華そば(和歌山県和歌山市)

CREDIT

    • ライター
    • 執筆

    藤原かんいち

    • 撮影

    藤原かんいち

    • バイク

    リトルカブ

白亜の灯台
潮岬の断崖に立つ白亜の灯台は100年以上の歴史を持つ。灯台には資料館もある。

いまからもう10年近く前の話になるが、北は北海道から南は沖縄まで日本の麺料理を訪ねるバイク旅をしたことがある。札幌ラーメンからじゃじゃめん、稲庭うどん、喜多方ラーメン、ローメン、信州そば、きしめん、味噌煮込みうどん、讃岐うどん、かわらそば、博多ラーメン、長崎チャンポン、皿うどん、沖縄そばなどなど、日本全国の麺という麺を食べ尽くした。

潮岬
本州の最南端の地である「潮岬」。芝生が広がる公園にはそれを示す石碑が立っている。

それぞれに特徴があるのだが、興味深かったのがラーメンのスープに地方色があること。北海道は別格にすると、北は東北から関東、中部、名古屋あたりまでほとんどが醤油味。それが関ヶ原を越えて京都に入るとようやく豚骨が入ってきて豚骨醤油になり、さらに西へ行けば行くほど豚骨の割合が多くなって行く。沖縄まで行くとこれがまた麺もダシもガラッと変わるのだが、この変化がとても新鮮だった。

白崎海洋公園
白い石灰岩と美しい海がある白崎海洋公園は「日本のエーゲ海」と呼ばれている。

心に残っている麺はいくつもあるのだが、その中でも衝撃的で印象に残っているのが和歌山ラーメン。僕はグルメという訳でもなく、それほど予備知識もないままに有名な井出商店という店に入ったのだが、出てきたラーメンがとろっと粘りのある濃厚な豚骨醤油スープ、麺はストレート。これがいままで食べたことのない個性的な味で、和歌山ラーメン恐るべしという感じだった。

>みかん
和歌山県に来たら食後はみかんでしょう。産地なので新鮮な上に値段も安い。

あれからずいぶん時が流れている。久しぶりに和歌山ラーメンのあの衝撃を味わってみようか、ってことで和歌山市内へ向かった。時期が11月ということもあり、有田市に入るとみかん畑が目立つようになった。さすが、日本有数のみかんの産地。民家と道路以外は全てみかん畑なんじゃないか?というくらいたくさんある、猫の額ほどの狭い土地にまでみかんの木が植えらているのを見たときは「そこまでやるか!」と笑った。

みかんが大好物の僕にとっては天国のような状態で、道の駅や無人の販売所でみかんを見つけては食べまくった。ラーメンを食べる前にそんなに食べて大丈夫かって?心配は無用!ラーメンの分の胃袋はちゃんと開けてあるんです(笑)

>国道42号沿いにある
国道42号沿いにある。外観から受ける印象では小さそうだが店内は意外と広い。

ここで改めて和歌山ラーメンのことをネットで調べてみた。すると前回食べた井出商店を中心とする「井出系」(どろっと粘り気のある豚骨ベースのスープが特徴)と「車庫前系」(鶏ガラと豚骨がベースの醤油スープ)と大きく2つに分かれることがわかった。ならば前回とは違う「車庫前系」の店にする。

地図で調べてみると、いま走っている国道42号沿いに「元車庫前○宮」なる店があることがわかった。よし、ここへ行ってみよう。

西日本のラーメン
西日本のラーメンはストレート麺が主流。醤油豚骨のスープに良く馴染む。
「中華そば」
これが今回紹介する「中華そば」。この味は一度食べたら病みつきになる!?

着くと店の外壁に大きな○の中に宮の文字。そして大きく中華そばと書かれている。そう、一般的に和歌山ではラーメンは中華そばと呼ばれているのだ。引き戸をガラガラと開けると10ほどテーブル席がズラッと並び、奥が厨房になっていた。客席と厨房の間に仕切はなくオープンになっている。夜遅いこともありお客さんは他に二組だけしかいなかった。席に着きメニューを見ると中華そばだけと思いきや、炒飯、野菜炒め、餃子など中華料理屋並に種類が揃っていた。しかし、僕が注文するのはもちろん中華そば。

根来寺の大塔
和歌山市の隣り岩出市にある根来寺の大塔(国宝)は一見の価値あり。ぜひ訪問したい。

それほど待つことなく中華そばが運ばれてきた。前に食べた井出のスープは茶色く濁っていたが、今回は醤油色。かなり透明度も高い。飲んでみると豚骨が持つ独特の臭みはなく、飲みやすい。麺を持ち上げるとやはりストレート。スルスルと入って行くノド越しが気持ちいい、麺に絡まるスープはあっさりしているのだがコクがある。スープと麺のバランスが絶妙。僕的には井出商店よりもこっちの方が好み。載っている具材はチャーシュー、メンマ、蒲鉾、長ネギと一般的。チャーシューは少し硬めで、肉の味がしっかり伝わってくる。メンマは適度に歯ごたえがあり、中華そばとの相性がとても良い。

白浜温泉の「崎の湯」
1350年の歴史を誇る白浜温泉の「崎の湯」。すぐ目の前に雄大な太平洋が広がっている。

今回食べた中華そばは、同じ和歌山ラーメンでも前回食べた井出商店のとはかなり違っていた。時間がかなり経っているので記憶は曖昧ではなるが、僕的には今回の方がおいしく感じた。機会があればもう一度、今度は井出系の別の店の中華そばもぜひ食べてみたい。食べれば食べるほど、他の店はどんな味なのか?気になってくる。そして、さらに和歌山ラーメンへの興味が強く沸き上がってくる。ラーメンはシンプルだけど実に奥が深い食べ物なのである。

一枚岩
犬の影が現れると話題になっている一枚岩(国の天然記念物)は清流・古座川沿いにある。

かんいち的採点表

あじ:

ボリューム:

値段:

中華そば 600円(税込)

~今回の旅ごはんinfo~

元車庫前○宮
住所:和歌山県和歌山市毛見1130-3
TEL: 073-445-4881
定休日:月曜日(祝日の場合翌日)

元車庫前○宮

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