BBB MAGAZINE

  • 藤原かんいち電動バイク世界一周 夢大陸オーストラリア編

    2008.11.23 / Vol.13

    「不死身な男」

CREDIT

    • ライター
    • 執筆

    藤原かんいち

    • 撮影

    藤原かんいち

    • バイク

    モトラ

VOL.13 「不死身な男」[夢大陸オーストラリア - 番外編 -]

途中で知り合い「遊びにおいで」と誘ってくれた旅行者の住所録から、パースの人を探し、家をたずねることにした。

ロッドさん
パースでお邪魔したロッドさん。突然の訪問にも関わらず大歓迎してくれた。

8月の始めにホールズ・クリークの近くのブッシュで一緒にキャンプして、その後ロードハウスで再会したロッドさん夫婦を訪ねることする。ご主人が中古のバスを買ってキャンピングカーに改造、イエローのボディが印象的で、まさに「幸せの黄色いハンカチ」ならぬ「幸せの黄色いバス」という感じ。とても仲のいい夫婦だったので強く印象に残っていた。
電話を入れてから訪問するが、こんな風に道中で知り合った人の家を訪ねるのは初めて。実は社交辞令でイヤな顔をされたらどうしよう...ドキドキしながら玄関ブザーを押すと、「オオ~ゥ、カンイチ!」と大きく両手を広げ、懐かしい顔が出迎えてくれた。
夜は奥さん手作りのハンバーグ。これが気絶するほどうまかった。これまでオーストラリアで食べた中で一番だろう、やっぱり料理は手作りに限る。「エクセレント!」少しオーバーに誉めると、奥さんはウインクをしながら「サンキュー!」と笑った。
翌日はロッドさんの運転でパースやフリーマントルの町を案内してもらった。車で観光をするのは初めてなので風景がとても新鮮に映る。ロッドさんのお陰で、つかの間観光客気分を味わった。

自分のことのように嬉しかった。

長居をしても迷惑をかけると思い、町の宿へ移動することに。それにこれまでずっとひとりだったので、人の家だと気を使い落ち着かないのも理由のひとつだった。
メインストリートを歩いているとビックリ、ブルームで会った藤原くんが歩いているではないか。1ヶ月ぶりの再会だ。ところがさらに驚いたことにポート・オーガスタで別れたシンとパースで会ったというではないか。話を聞くと自転車でナラーボー平原の超難関のダートを走り切り、数週間前からパースで滞在しているという。
「そうか、シンは線路沿いを完全走破したのか!」
僕はシンが無傷で平原横断を成し遂げたことが自分のことのように嬉しかった。
ポートオガスタで別れたとき、もう二度とシンとは逢えないかもしれないと思っていたのに...もしかしたらこの町で逢えるかもしれない。そんな期待が沸々と沸き上がってきた。
喫茶店を出てバイクに戻ると、その横に見覚えのある自転車が止まっていた。
「これはもしかしたらもしかして、シンの自転車じゃないか? そうだ、このバック見覚えがある、絶対にシンの自転車だ!」
興奮しながら辺りをキョロキョロ見回すと、向こう側からニヤニヤと笑いながら見覚えのある、タレ目男が歩いてくるじゃないか
「おう、かんいち! また逢えたな」
「シン! 生きて無事たどり着いたかぁ!」
シンに駆け寄ると、僕たちは燃えるような熱い握手を交わした。

シンとの再会を期に僕は新たなる決意をした。

このまま舗装路をたどって行けばいくら原付といえども、大陸一周は達成できるだろう。大陸一周を確実に成し遂げるなら、このままで舗装路を行くのが一番確実、しかし、それでは何か違う。僕が求めていた旅は先の読めない、原付の限界に挑戦する旅ではなかったか。そこで僕はパースから先は敢えて悪路のオフロードばかりを選んで走る、過酷なルートを突き進むことにした。
果たしてどんな結果が待っているか分からないが、後で「あの時、あれしておけば良かった」と後悔はしたくない。とにかく失敗をしてもいいから、自分が満足をできる旅をしたい。そんな思いから過酷なルートを目指すことを決断した。
よし、まずは総延長1400km無給油、とてつもない悪路が続くナラーバー大平原横断の旅に挑戦だ!

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