BBB MAGAZINE

  • 藤原かんいち電動バイク世界一周 夢大陸オーストラリア編

    2008.11.24 / Vol.24

    「顔面蒼白。ドレンボルトがない」

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    藤原かんいち

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    藤原かんいち

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    モトラ

VOL.24 「顔面蒼白。ドレンボルトがない」[夢大陸オーストラリア - 番外編 -]

突然エンジンが止まったと思ったら、焦げるようなイヤな匂いが鼻を突いた。
ま、ま、まさか...と青ざめながらエンジンを覗くと...
「ガガガガガガ~~~ン!!!」

エンジンが焼き付き動かなくなった現場
ここがエンジンが焼き付き動かなくなった現場。一生忘れられない場所になりそうだ...

何と! エンジンの下で止まっているはずのドレンボルトが、なくなっているではないか。恐らく振動で抜け落ちのだろう。どうやらボルトの穴からオイルが流失して、ピストンかシリンダーが焼き付いたようだ。
これはマイッタ。まさか、車も通らない無人の砂漠で、最悪の状況に陥るなんて...自分の不運を恨んだ。
「あ~あ、これはとんでもないことになったぞ...」
頭を抱える。そこでふとスペア用のボルトを持ってきていることを思い出し、慌ててバックを引っかき回した。
工具箱を取り出して合いそうなボルトを必死で探したが、残念ながら見つからず。さらに深く肩を落とした。
しかし、冷静に考えてみれば例えボルトがあっても、中に入れるオイルがなければ、どうにもならないではないか。恐らくエンジンの中はカラッポのはず。手持ちの予備オイルは約300ccしかないので、これでは容量の半分にも満たない。町までバイクを押して行こうにも、とてもじゃないが歩いて行ける距離ではないし。

「一体どうしたらいいんだ...」
どうやら通りかかる車を待つしか方法はないようだった。
エンジン音がなくなると砂漠は昼間だというのに闇夜のように静かで、胸が締め付けられるような孤独感がジワジワと襲ってきた。
太陽が地平線に差し掛かる頃、車が現れるのを待つだけという状態がどうしても耐えられなくなり、水の手に入る場所へ移動することにした。少しでも今の不安を忘れたかったのかもしれない。

「お~い、止まってくれ!」

5kmくらい手前にウォータータンクの設置されたロードサイドストップがあったことを知っていたので、バイクを押しながら向かっていると、エンジンのような音が、かすかに聞こえるような気がした。
もしやと思い。耳を澄ますと、確かにエンジン音が聞こえる。その音は確実に大きくなっていた。車だ。車が走って来るぞ。
「やった、助かった!」
僕は興奮して地平線を見た。しばらくすると地平線の彼方から黒い影がポツリと現れた。そしてその影は猛スピードで僕の方に向かってきた。
「お~い、止まってくれ!」
僕はピョンピョン飛び上がり、車へ向かって大きく手を振った。車がスピードを落とし始めると、急いで駆け寄りドライバーに今の状況を説明した。
作業着を着た恰幅のいいオジサンがシートにドッカリ腰を下ろしていた。僕の話しがひと通り終わるとオジサンは
「オイラはこれらからこの先にある鉱山に行く途中なんだぁ、まあ、そういう事情なら鉱山の仲間が明日の朝、ここを通るはずから、合いそうなオイルとボルトをそいつらに渡しておくよ」

なんてことだ。

嬉しいことを言ってくれた。助かった。サンキュー、サンキューと何度も手を握り、お礼を告げた。
先の見通しが立ったところでブッシュに戻り、平らなところを探してテントを張った。最終確認のためクランクケースのネジ穴を覗くと、ネジ山が削れてなくなっているではないか。どうやら強く締めすぎてネジ山をねじ切ってしまったらしい。なんてことだ。 これではオイルとボルトがあっても意味がないよ。新たにネジ山を彫らなくてはどうにもならないではないか、クソ~ッ。予想以上に深刻な状態だった。
新しいネジ山を切るためには、恐らくアリススプリングスまで行かなくてはならないだろう。いやそれどころか、もうすでにエンジンは再起不能の状態になっているかもしれない。
僕は奈落の底に突き落とされた、ライオンの子の気分になった。
日はドップリと沈むと辺りは漆黒の闇に包まれた。じたばたしてもしょうがない、とりあえず寝よう。シュラフに身を沈めると
「これからまだ旅は続けられるのだろうか?」
「ボルトが着けられたとしても、エンジンは動くのか?」
不安が津波のように押し寄せてきて、なかなか眠ることができなかった。心配しても今の状況が変わるわけでもない、それでも心配をせずにいられなかった。なるようにしかならないんだ、と自分に言い聞かせ、そっと目を閉じた。

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