BBB MAGAZINE

  • 藤原かんいち電動バイク世界一周

    2007.11.01 / Vol.06

    電動バイク世界一周の旅『 感動のニューヨーク 』

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    藤原かんいち

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    藤原かんいち

    • バイク

    パッソル

VOL.06 『 感動のニューヨーク 』[アメリカ大陸編]

藤原かんいちの冒険ツーリング

パンク地獄からの脱出

古いノコギリの刃先
これまでいろんなものを踏んでパンクしてきたが、これが一番驚いた。どうやら古いノコギリの刃先のようだった

「げげげっ、うそだろ~っ!」
2日前に1日2回のパンク、そのとき完璧にパンク修理したはずなのに、またしてもタイヤの空気が抜けているではないか。
「ええっ、またパンクなの!? もう信じられな~い」
ヒロコもあきれ果てている。

やれやれ...とため息をつきながらタイヤを外すと、修理したパッチが捲れていた。僕の修理が下手なのか? それともパッチが悪いのか? とにかく日本から持ってきたパッチはすべて使いきっていたので、これはもう最後の手段ということで、アメリカで買った車用の特大パッチを貼ることにした。日本では見たこともない直径10cmもある大形のヤツ、これなら大丈夫だろう。

ヤスリをかけ、のりを塗り、祈るような気持ちでパッチを貼り付ける。まずは試しで空気を入れてみる。しばらく様子を見るが空気が漏れてくる気配はない。これなら大丈夫と考え、チューブを入れてホイールにタイヤをはめ込む。


ヨーロッパ風の町並み
東部に入るとヨーロッパ風の町並みが多くなる。西から東へ、風景や気候と共に文化も微妙に変化している。

「ふ~っ、ようやく終わった、おつかれさま!」
ヒロコと固く握手。さあ、行こう。勢い良くバイクに跨ると、嫌な感触が再びおしりを襲った。ま、ま、まさか...恐る恐るタイヤを見ると、またしても空気が抜けているではないか。
「クソ~ッ!」
ふたりは愕然と立ち尽くした。

気も取り直してもう一度タイヤを外すと、貼ったばかりの巨大パッチが無残にも捲れ上がっていた。穴が大き過ぎるのか、空気圧でパッチが剥がれてしまうらしい。さあ、どうしよう。もう、こうなったら最後の手段と思い、新しいパッチを貼り替えると、その上にビニールテープをグルグルに巻いた。これでどうだ!

テープのおかげでどうにか5km先のモーテルにまでは走ったが、それからまたすぐに空気が抜けてしまった。今のチューブでこれ以上進むのはもう不可能だ。もちろん、パッソルのチューブはアメリカでは入手不可能。ああ、困った、一体どうしたらいいんだ。思わず頭を抱える。


モーテルの駐車場に並んだバイク群
モーテルの駐車場に並んだバイク群。アメリカでは人気があるのがこのタイプ。値段が値段だけにライダーの年齢層も高かった

そこでこの町からおよそ50km先のルイビルの町にある郵船航空サービスのオフィス宛に、日本から新しいタイヤとチューブを輸送するようお願いしていたことを思い出した。
そうか、ルイビルまでマジェスティで新しいチューブを取りに行けばいいんだ。

とにもかくにもタイヤが届いていなければ話ならない。急いでオフィスに電話を入れると、ラッキーなことに2日前に届いているというではないか。何というタイミングだ。ホントに運がいい。往復100kmもあるが、フリーウェイなら2時間で行けるだろう。

「ああ、よかった、これで先に進める!」
僕はマジェスティに跨ると、勢いよくセルスターターを回した。

ワンダフル、ナイアガラホールズ

よく雨に降られた
東部ではハリケーンの影響を受けてよく雨に降られた。西部では2ヶ月間以上も雨が降らなかったのがウソのよう

ピカピカのタイヤとチューブに履き替えると、僕たちは一路「ナイアガラの滝」を目指した。もうパンクはコリゴリ、最後までノントラブルで頼むぞ。

ケンタッキー州のルイビルを出ると、車の少ないローカルな道を繋げてオハイオ州へと向かった。ハイウェイの両側には、手入れの行き届いた芝生の大きな家がズラッと並んでいた。まるでアメリカ映画に出てくる家のようだ。庭にプールがある家、ボートが置いてある家も多い。東部のこの辺りはお金持ちが多いのだろう。

そのせいではないと思うが、東へ行くほどモーテルの宿泊料金もグングンと上がっていった。同じレベルの部屋が西部に比べて3~5割は高い感じ。


ナイアガラの滝
アメリカ横断の目的のひとつがナイアガラの滝を見ることだった。そのスケールの大きさに感動

また西部では小さな町でも必ず1、2軒モーテルがあったのに、東部では大きな町なのにモーテルが1軒もなかったり。いいところにあったと思ったら値段が高くて泊まれなかったり、もう散々だった。まさか人口の少ない西部よりも、人の多い東部で宿探しに苦労するとは...想像もしていなかった。

8月4日。冷たい雨が降りしきる中、「ナイアガラの滝」見学の起点となる町、ニューヨーク州のバッファローに到着した。
ナイアガラの滝は特に僕が楽しみにしていた場所。というのは世界三大瀑布とされているアフリカの「ビクトリアの滝」を90年に、南米の「イグアスの滝」を98年にたずねているので、今回「ナイアガラの滝」をたずねると、世界三大瀑布の全てを訪問したことになるからだ。そんなわけでその日は朝からワクワクソワソワ。遠足へ出かける小学生並みのはしゃぎ振りだった。


ナイアガラの滝
観光船に乗ると、信じられないくらい近くでナイアガラの滝を見ることができる。全身ずぶ濡れでもこの笑顔

ドドドドッ...と地鳴りのような音が響く方へ行くと、そこは滝の上でものすごいスピードで水が流れていた。さらに川下へ歩いて行くと、ある地点で川はいきなり途切れ、そこからとんでもない量の水が、一気に数十メートル下へ流れ落ちていた。
「おおっ、これがナイアガラの滝か。すごい!」

水の勢いは桁違いで、見ていると滝に吸い込まれそうだった。もっと近くで滝を見ようと思い、僕たちは観光船に乗り込んだ。徐々に滝つぼへ近づき、数十mのところまで来ると滝が舞い上げる水飛沫が物凄く、周りが見えなくなる。

もう全身ずぶ濡れなので他の観光客もみんな興奮状態。滝をこんなに近くで見られるのは世界三大瀑布の中でもナイアガラの滝だけ(たぶん)。これまでで一番エキサイティングな滝見学となった。

感動のニューヨーク

ニューヨーク州の標識
いよいよアメリカ最後の州となる「ニューヨーク州」に突入。この標識、実は民家の庭に立っている

世界有数の巨木をたずねること、そしてナイアガラの滝の訪問という、アメリカ大陸横断の大きな目的を果たすと、後はアメリカ最終目的地ニューヨークを目指すだけとなった。

順調に行けば8日間でたどり着ける距離まで来たが、神様は最後まで簡単にには行かせてくれないようで、なんと巨大ハリケーン「チャーリー」がフロリダ半島を直撃。さらにニューヨークへ向かって北上中だというではないか。なんてこったい。

それから毎日朝晩、テレビでハリケーンチャーリーの動きをチェック。マンハッタン島に入る日は、ハリケーンが通過した後にも関わらず、その影響から叩きつけるような大雨となった。最後なのに悔しい。

マンハッタンの道は路面状態がとてもひどく、マンホールは路面から5cm位沈んでいるし、あちこちに継ぎ接ぎ、ひび割れも多くてとても走りにくかった。舗装道路だというのに僕たちはまるでダートを走るように、ラインを選びながら走らなければならなかった。


ニューヨークに到着
いよいよアメリカ最後の州となる「ニューヨーク州」に突入。この標識、実は民家の庭に立っている

そしてついに、前方に高層ビル群が見えてきた。
雨で霞んではいるけれど、正真正銘のニューヨーク。夢にまで見たアメリカ大陸横断のゴール、ニューヨークにたどり着いたのだ。言葉にならない感動が込み上げてくる。

4ヶ月と6日前。サンフランシスコを出発した日は、ニューヨークがあまりに遠すぎて、全く現実味がなかった。だが、いま8000kmもの長い旅路を越えて、その場所に立っているのだ。嬉しい。僕たちはホントにアメリカ横断を成し遂げたのだ。

パッソルとマジェスティでニューヨークの街を走っていると、僕たちは毎日いろんな場所で充電をしながら、時速30kmのスピードで、4ヶ月以上もかけてここまで走ってきたんだぞ! とニューヨーク中の人たちに叫んで回りたい気分になった。

到着の翌日。前日の雨がうそのようなきれいな青空が広がった。それはまるで空が僕たちのゴールを祝福しているようだった。

メキシコ、ハワイの巨木をたずねて

この木なんの木、気になる木
みんなが知っている「この木なんの木、気になる木...」のCMに使われているのは、ハワイのオアフ島にあるモンキーポット

僕たちはアメリカ横断を果たしたその3日後、飛行機でメキシコへ向かった。アメリカ大陸で最も大きい(幹周り)といわれる巨木に会うためだ。バイクのない旅はどこかに何かを忘れ物しているようで、おかしな感じだったがそれはそれで楽しかった。

メキシコシティからさらにまた飛行機に乗り、メキシコ南部にあるオアハカの町へ。さらにそこから路線バスに揺られること30分。ようやく巨木のあるトゥーレの町に到着した。

会いたかったその木は、白い教会が立つ公園の真ん中に堂々と立っていた。緑の葉が豊か生い茂り、木というよりもひとつの森のようだった。ホントに巨大な木だ。

メキシコ人の観光客たちも次々この木を見にやって来るが、この木を見上げているとどんな人たちでも、穏やかな表情になるのが不思議だった。


モンキーポットの芝生と木陰
緑の芝生と木陰がとても気持ちよさそうでしょ。まるで巨木に包まれているような気分だった

もしかしたらこの木には、人の心を癒してくれるパワーがあるのかもしれない、そんな気がしてならなかった。世界にはすごい木があるものだ。

メキシコからさらにハワイへ飛び、次に出会ったのが、「この木なんの木、気になる木...」のCMでお馴染みのあの木だった。
バスに揺られてたどりついたところは、郊外にある大きな公園で、その木は緑の芝生の上に立ち、気持ちよさそうに枝を広げていた。太陽の光を全身で浴びて、のんびりと幸せそうに生きている、なんと幸せそうな木だった。

そして僕たちは約5ヶ月ぶりに日本の地を踏みしめた。これから約1ヶ月間、日本で旅の準備を整えて、10月には次のステージとなるオーストラリア大陸へと旅立つ予定だ。
僕たちの未知への挑戦の旅はまだまだ続くのだ。

取材・文/藤原かんいち&ヒロコ (2004/09/08)

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