BBB MAGAZINE

  • 藤原かんいち電動バイク世界一周

    2007.11.01 / Vol.10

    電動バイク世界一周の旅『 ナラボー平原突入 』

CREDIT

    • 人型
    • メモ

    藤原かんいち

    • カメラ

    藤原かんいち

    • バイク

    パッソル

VOL.10 『 ナラボー平原突入 』[オーストラリア大陸編]

藤原かんいちの冒険ツーリング

ナラボー平原突入

ラクダのモニュメント
ノースマンで見つけた、トタン板で造られたラクダのモニュメント。次は電動ラクダで旅をしようか

僕たちは南極海に面した町アルバニーを出ると内陸部へ向かった。1、2日目は道の両側は疎らに木が生え、その向こうには広大な牧草地が広がっていたが、周りの木も徐々になくなり乾燥した荒野が続くようになった。いよいよ本格的なアウトバックの始まりだ。

1日かけて100km前後走り、ようやく次の集落にたどり着くという感じで、僕たちは少しづつ前進して行った。
美しい白い砂浜がいくつもあるエスペランスでひと休みすると、再び内陸へ向かう。
途中の町、サーモンガムでパッソルのオドメーターがついに10000kmを表示。この旅のパッソルの走行距離は9500kmとなった。


オーストラリアへやって来た祐介君
21歳の若さでオーストラリアへやって来た祐介君。無事にパースへ着いただろうか?

翌日、オーストラリア最大の難所「ナラボー平原横断」の西側の入口となるノースマンに到着。町といっても荒野の真ん中にある小さな町で、人口は600人余り、メインストリートに並ぶ数少ない商店も半分は空き家状態で閑散としていた。

ここを出たら約1200km東のセドューナまで、その間に町はひとつもなく、通行する車のために作られた「ロードハウス(ガソリンスタンド・キャンプ場・モーテルなどを備えた施設)」がポツポツと点在するだけ。人間が住めない荒野が延々と続いている。
また携帯している6本のバッテリーを一度充電しただけでは、次のロードハウスへたどり着けない、180km以上も何もない区間が2箇所。そう、パッソルだけではなく全ての旅行者にとって「ナラボー平原横断」は厳しく長い道程なのである。


ナラボー平原
ナラボー平原も西側は意外と木々がたくさん生い茂っていた。林の中を道がまっすぐ延びている

インフォメーションセンターへ行き、さらに詳しい情報と地図を集めた。そこで気になっていた風向きのことを尋ねた。すると係員は「暑い時期は主に北東、寒い時期は主に南西から風が吹いている」というのではないか。今は夏、そして僕たちが向かうのは東、ということは...うわぁ、逆風じゃないか。

「うそーっ、どうしよう...」
ヒロコはかなりショックを受けている様子。
「まあまあ、自然が相手だから、仕方ないよ! 向かい風、いいじゃない、アハハハ...」僕が笑いながらヒロコの肩を叩くと
「まったく、もう、あんたは、いつも能天気なんだから!」
とあきれられる。そんなこと言わないでヒロコちゃん、よろしくお願いしますよ。
僕たちは横断に2週間かかると想定して、それ相当の食料と飲料水をバイクとザックに積載した。さらにマジェスティのエンジンオイルも新品に交換。準備を万端に整えてノースマンを出発した。

焦げ付く大陸

僕たちの旅
風向き次第でその日の状況が変わるのが僕たちの旅。最初の180km区間は順調だった

「ウゲーッ! この暑さはなんだぁ~。体が溶けそうだよ」
「ナラボーってこんなに暑いの、ディスバレーより暑いじゃない」
ナラボー平原横断の初日。陽が昇ると同時に上昇を続けていた気温は、午後2時過ぎ、ついに46℃にまで達した。信じられない、体温どころか温泉のお湯よりも熱いじゃないか。生卵をポケットに入れていたら、ゆで卵になるんじゃないか? というくらい熱い。

日焼け対策のために長袖のTシャツを着ているというのに、ハンドルを持つ腕がジリジリと音を立てて日焼けしているのがわかった。
「クソッ、なんて強烈な太陽だ!」


ラクダ、エミュー、カンガルーに注意の標識
この先150km。ラクダ、エミュー、カンガルーに注意の標識。この中でラクダだけは一度も見なかった

僕たちはバッテリー交換でバイクを止めるたびに、お湯のように熱くなったペットボトルの水をガブ飲み。その暑さは想像をはるかに超えていた。
5時間をかけて100kmを走り切り、ようやく最初の中継地にたどり着くと、真っ先に冷えたミネラルウォーターを買い、ゴクゴクと音を立てながら狂ったように水を飲んだ。

「ああ、生き返る!」「しあわせ~っ!」
夜9時過ぎ。突然、強風が吹き始めたと思ったら叩きつけるような雨が降り始めた。さらにゴロゴロピカピカと雷まで轟く、大荒れの天気に変貌した。だが雨のお陰で翌日はグッと気温が下がり、Tシャツと長袖シャツだけでは寒いくらいになった。


道ですれ違ったイタリア人ライダー
道ですれ違ったイタリア人ライダーとバイクを止めておしゃべり。電動バイクに興味シンシンの様子

3日目はロードハウスが183kmない最初の難関。深夜の3時に起きて準備をすると、夜明けると同時にロードハウスを出発した。走り始めて10分位だろうか、
「うおおおっ、カンガルーだっ!」
20m位前をカンガルーが横切っていった。野生のカンガルーを見たのは初めて、後ろを走るヒロコを見ると子供みたいに喜んでいる。早起きをするといいことがあるなぁ。

46km走り2本目のバッテリーが終わったところでストップすると、使った2本をマジェスティに積み込んだ。今朝出てきたロードハウスへ引き返してその2本を再充電、走行距離を2本分延ばすのだ。そして充電してあるバッテリーを3本パッソルに積み込む。

「ヒロコよろしく頼んだぞ。パッソルはこの3本で後60kmは走れるはずだから」
「わかった。充電が終わったらすぐ戻って、追いかけるね」
「大体、100km位の所にいると思うから。気をつけて行けよ」
「うん、かんいちもね!」


どこまでも続く地平線
どこまでも続く地平線に気が遠くなる。この辺りから木が姿を消し、ナラボーらしい風景になって行く

手を振りヒロコを見送る。小さくなってゆく後姿を見ながら、僕はこの旅を始めた頃を思い出した。走り始めた頃のヒロコはマジェスティの重さに四苦八苦。「もう、地面が砂利だからバイクが止められない!」「ちょっと、無理、運転を変わって!」とよく文句を言ってたが、随分頼もしくなったとしみじみ思う。

そこからは普段は時速25~30kmで走っているところを、さらに走行距離を延ばすため20kmまでスピードを落として走る。
順調に距離は延びて、1本で何と30km近くも走った。いいぞ、その調子で頼むぞ。
走行距離98km。
遅い。もう追いついていい時間なのに、なかなかヒロコが現れない。まさか事故に巻き込まれたのでは...急に心配になる。


巨大なステーキバーガー
この巨大なステーキバーガーを見よ。ひとりではとても食べきれないのでふたりで半分にして食べる

少しすると遥か後方に小さな影が現れた。車? それともヒロコ? 何度も後ろを振り返り確認するが、その影はなかなか大きくならない。何度か振り返ったところで、その影がヒロコであることがはっきりわかった。

「おおおっ、ヒロコだ!」
バイクを止めると手を取り合って再会を喜んだ。とにかく無事会えてよかった。

もう一度、次は先のロードハウスへ行って再充電をする予定だったが、今日は無風、そして20km走行が功を奏して、一度の再充電だけでギリギリ次のロードハウスに到着することができた。しかし、今日は12時間もぶっ通しで走ったのでもうクタクタだ。夕食は奮発してステーキバーガー。ベットに横になると泥のように眠った。

12月18日。その日は僕たちの12回目の結婚記念日であった。

ナラボー平原に乾杯!

地平線をひたすら追いかけ続ける毎日
どこまで続く地平線をひたすら追いかけ続ける毎日。冷たい水が飲めるロードハウスはまさにオアシス

12月24日、クリスマスイブ。
僕たちはサンタクロースもクリスマスケーキも無縁のナラボー平原にいた。それどころか、この日は186km何もないナラボー最大の難所、さらに向かい風にも悩まされていた。
周りは相変わらず単調な風景が続いている。
「世間はクリスマス気分で浮かれているのに、おれ達はクルシミマスかい!」

悪態を吐いても状況は変わらないどころか、さらに悪化していった。午後になってさらに風が強くなったのだ。お陰で前回のように引き返して再充電するだけでは足りず、充電したバッテリー2本受け取ると、さらにヒロコは再々充電するため、空のバッテリーを3本持って次のロードハウスへ向かって行く。


断崖絶壁の海岸
道を離れ展望台へ行くと、大地がいきなり切れ落ちたような断崖絶壁の海岸が続いていた

僕は朝5時から14時間走りっぱなし。ヒロコは重いマジェスティで往復400km近くも走っている上に、充電が3回。さらに荷物の上げ下ろしや充電のセッティングまでしているのだから、かなり疲れただろう。

そんなわけでようやく地平線の彼方に次のロードハウスが見えてきたときは、涙が出そうなほど嬉しかった。
そしてその2日後の12月27日。ナラボー平原横断を始めて12日目。横断の終わりを告げる町セデューナが、前方に見えてきた。
「ヒロコ、町が見えたぞ。やった、もうすぐセデューナだぞ!」
「長かったナラボーの旅がやっと終わるのね...」

僕たちはその夜、温かいピザと冷えたビールとコーラで、静かにナラボー平原横断達成の祝杯を上げた。 僕たちはついに電動バイク「ヤマハパッソル」であの途方もなく巨大で単調な大平原を越えたのだ。

取材・文/藤原かんいち&ヒロコ (2004/12/28)

人気コンテンツ