BBB MAGAZINE
CREDIT
-
- ライター
- 執筆
藤原かんいち
-
- 撮影
藤原かんいち
-
- バイク
パッソル
VOL.01 『 序章 』[アメリカ大陸編]

イントロダクション

ヤマハ発動機から100%電気の力で走る電動バイク「パッソル」が発売されると知ったのは2002年秋。夫婦で原付にタンデムで巨木をめぐりながら北から南へと、日本縦断の旅をしている途中のことだった。
以前から未来の乗り物として電動バイクには興味を持っていたが、これまでのものは充電に7~8時間もかかり、またバッテリーの取り外しができなかったり、まだまだ発展途上のものばかりだった。
ところが発売されたパッソルは当然のことながら公道は走れる上に、充電時間は2時間半とこれまでのものより大幅に短縮されていた。さらにバッテリーの取り外しが可能ということで、一気に僕のテリトリーに入ってきた。予備ガソリンのように充電済みのバッテリーを持っていくことができれば長距離を走るかも...、もしかしたら世界一周さえも夢ではないかもしれないぞ...。
僕は興奮で足がガタガタと震え、思わずパッソルの記事が載っていた雑誌を強く握り締めていた。そして僕の心の奥に眠っていた冒険心の炎がメラメラと燃え上っていった。

巨木の旅を終えると、僕は試乗をするために三田のヤマハ発動機を訪ねた。この試乗は、パッソルが旅に耐えられる性能を持っているか確認するというものではなく、僕の中ではもう完全に旅の予行練習だった。
当然のことながら、パッソルは町中を移動するために作られたバイクであることは百も承知していた。だが僕にはスクーターなどの原付バイクで世界を旅した経験がある。自宅からコンビニまで行けるバイクなら、その距離を積み重ねて行けば、いつかは世界一周さえも達成できるということ経験として知っていた。それにヤマハ発動機が作った電動バイクならば信頼性は高いだろう、これは世界ツーリングをできる実力が十分にある、と実物を見る前から踏んでいたのだ。
とはいえ、いま思うと試乗する前から「次はパッソルで世界一周をする」と決めていたのだから、自分はとんでもない大バカ野郎なのは確かだと思う。
初めての電動パッソル
パッソルに跨り走り出したその瞬間、僕が生まれて初めてバイクに跨った時と同じくらい、強烈な衝撃が背中を走った。「なんだ!?この感覚は。すごい、すごいぞ!わぁお~っ!」
思わず奇声を上げた。走り出す感覚がガソリンバイクと全く違う。滑るように動き出すので、まるで空中移動をしているようだ。さらにバイク独特の排気音がないためとても静か、聞こえるのはかすかなモーター音だけ。いつもは気にならない車の排気音さえうるさく感じるほど。そこにはこれまでのバイクとは違い新しい世界が広がっていた。
「この電動バイクで世界を走ってみたい...」という思いは、実際にパッソルに跨ったことでますます強くなっていった。
巨木との出会い

パッソルと出会う1年ほど前。僕にはもうひとつ大きな出会いを経験していた。ある日、何気なく立ち寄った書店の本棚で、目に止まった巨木の写真集を手に取った。ページを開いた瞬間、巨木の姿に目が釘付けになった。自分の想像力をはるかに超える大きさと、巨木たちが放つ強烈な存在感に、完全に心を奪われてしまったのだ。
まるで子供の頃の宝物だった「怪獣百科辞典」を捲るような気分で巨木を眺め、新しいページに巨木が現れる度にワクワク心が躍った。
それは世界各地の巨木を紹介した本で、桁違いの高さを誇るアメリカのレッドウッドやセコイア、上下を逆さまにしたような形をしたアフリカのバオバブ、幹周りが50m以上もある巨大なメキシコのトゥーレなど、それぞれが特別な個性を持った巨木ばかりで、どれもが圧倒的なエネルギーを放っていた。
それから巨木にどうしても会いたくなった僕は、その年の夏から妻とふたりで日本中の巨木たちに会う旅に出た。以前から知っていた巨木といえば屋久島の縄文杉ぐらいのものだったが、実際に日本中を歩いたことで、日本にもまだまだ知らないすばらしい巨木がたくさん存在していることを知った。
巨木をたずねる旅は感動の連続だった、それはまるで地球の宝物を探すような旅だった。そして日本の巨木を訪ねたことで、僕はますます世界の巨木たちに会いたくなっていった。

そんな地球自然のシンボルともいえる巨木をたずねる旅は、排気ガスを出さない、地球環境にやさしい電気バイクのヤマハパッソルこそがふさわしいのではないか?それはまるで運命の糸に手繰り寄せられたようなめぐりあわせだった。
そしてついに、未来の乗り物である電動バイク「ヤマハパッソル」の出現と、「世界の巨木たちに会いたい」という思いがひとつになり「世界の巨木をめぐる・電動バイク世界一周の旅」が生まれたのである。
日本の巨木をたずねる旅で、自然破壊や倒れ行く巨木を目の当たりにした僕は、小さなことでもいいから地球や巨木たちのためにできることはないかと考えていた。そんな思いもあり、この旅を皆さんに伝えることが、そんな手助けのひとつになればと思っている。

取材・文/藤原かんいち&ヒロコ (2004/03/29)
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